とりあえず秀徳に進学したという緑間くんを訪ねることにした。
桐皇からそんなに離れていないから学校が終わった後、時間をおいて部活が終わる頃に着くようゆっくり向かえば、まばらにすれ違う学ランとセーラー服の黒

秀徳を選んでたら私もこの中に混ざっていたんだよね…
やっぱり恥ずかしい気がして着れない。
ていうか確実に着られてしまう

セーラー服の似合う少女たちとすれ違いながら歩く。
桐皇の制服で帰路につく自分たちと逆方向である学校に向かうのがめずらしいのか、隠しきれない好機の視線をもらう。
ああ、やっぱり青峰くんか黄瀬くんについてきてもらえばよかった


しかしさつきちゃんも青峰くんも黄瀬くんも、みんな部活で忙しいんだから甘えてばかりいられない


心細いが、群青にのみ込まれつつある空を眺めつつ校門横で待つことにした。
我ながらベタだが、これぐらいしか確実に緑間くんと会える方法が思い付かないもの

ぴたりと校門を抜ける生徒の波が止み、部活終了を知らせるチャイムが響いた後にまたパラパラと疎らに生徒が出てくる。
そのどれにも緑色のひとつ飛び出た頭は見つからない

もしかしたら今日お休みなのかな

不安になってきて携帯を開けば青峰くんからメールがきていた。
なんだろう?
というより部活中じゃないのだろうか。もしやまた出ていないのか…?
不信に思いつつメールを読む


─緑間はいつも部活の後に自主練してっから遅くなる
俺がさっきメールしといたから早く切り上げると思うけど、会えそうになかったらとっとと帰れ。
一人で帰るなら俺に連絡しろ


不器用な優しさに思わず笑ってしまって、慌てて口元を隠す。
嬉しいなぁ
緑間くんに気を遣わせて自主練を切り上げさせてしまうのは申し訳ないけど、青峰くんからの心配がすごく嬉しい。
ありがとう、そうしますと返信を打っていると、不意に名前を呼ばれる


「……名字!」


優しい低音が心地よく私を呼んで、振り返れば懐かしい緑の髪と長身があった。
名前を呼んでくれて、一年ぶりでも後ろ姿でわかってくれることが、こんなにも心をあたたかくしてくれる


「緑間くん」


ニッコリ笑えば彼もやんわりとそのエメラルドを細めてくれた。
きっと青峰くんからの連絡を見て急いで来てくれたのだろう。
呼吸を乱した彼は膝に手をついて息を休める


「突然ごめんね、急がせちゃったよね」
「いや、いい。構わない…それより、久しぶりだな」


前屈みになっていたから普段よりもぐんと近い距離で目が合う。
ああ、本当に綺麗な緑色だ
気持ちが安らいで、それでいて照れくさいような

その瞳に合わせてゆるり微笑めば、彼も再び笑って髪を一房、指先で掬う。
左手の指にいつもある白いテーピングは無くて、色素の薄い私の髪に触れる素肌の指が、頬を撫でた。
彼に触れられるのは初めてだなと、心地よさにまぶたを下ろした



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