黒子くんを宥めテーブルを囲み落ち着く。
涙の滲む目をこすろうとした手にハンカチを握らせ一息ついたところで、飲み物を買いに行ってくれた緑間くんが戻ってきた


「ごめんね、ありがとう」
「構わない。ほら、チョコシェイクなのだよ」


彼の手から受け取った飲み物の代金を渡そうとすればいらないと断られる

えッ、予想外すぎる反応なんだけど…

奢ってもらうのは申し訳ないからなんとか受け取ってもらおうと苦戦するが、黒子くんにさえも止められた


「緑間君も男なんですよ。ここは格好つけさせてあげてください」
「うるさいのだよ黒子!」


優しげな笑みか几帳面な面持ちしか印象になかったため、黒子くんにからかわれて赤くなる緑間くんは新鮮だ。
失礼だけど可愛いと思ってしまう。
申し訳ない気持ちは変わらないが、収集がつかないので好意をありがたく頂くことにした
満足そうに鼻を鳴らした彼は、ただの男子高校生だ


黒子くんに思い出してからこれまでの経緯を話して改めてお礼を言う。
彼は私に毒を飲ませたことをとても気に病んでいたが、それはそれだ。
あの時は赤司くんの判断が最善だった

黒子くんを責める気なんてないし理解も納得もしているよと告げてやっと彼は口角を緩めた


「名前さんは変わりませんね」
「そうかな?」
「はい、まったく」


隣に腰かけている緑間くんを見上げれば彼もはっきり頷く。
褒められているのか違うのかよくわからなくて、少し頬を膨らませる。
黒子くんは少し口角を震わせながら私を伺っていて、コレはもしやからかわれている…?


「ッふ…すみません、怒らないでください」
「もう!笑わないでよぅ」


なかなかに黒子くんは悪戯心があるようでくつくつ笑い出した。
緑間くんは黒子くんに付き合うつもりはないらしく、涼しい顔で爽健美茶をすすっている


「緑間くん…」
「もうやめてやれ黒子。名字は話があってきたのだよ」
「ああすみません」


何がそこまで楽しいのかわからないが満足気な表情をして黒子くんは私たちに向き直った


「あと会えていないのは紫原君と赤司君なんですね」
「そうなの。二人ともすごく遠いとこに行っちゃってて、でもなんとか会いたいんだ」
「それならインターハイでこちらに来ると思います」
「へ?」


インターハイ?
確かにさつきちゃんや青峰くんは地区予選が始まって忙しそうにしていた。
あ、青峰くんは変わらないか


「まったく…青峰がいれば桐皇もインターハイに登り詰めるはずだ。桃井から何も聞かなかったのか?」
「何にも…とりあえず距離的に近い人から会いに行くっていう結論でまとまったの」


黄瀬くんとさつきちゃんと青峰くんと話した時に。
そう言えば二人は揃ってため息をついた。
なんでも、黄瀬くんと青峰くんは元バスケ部の中でも筋金入りの赤点組らしい


「あのバカ共が揃ってまともな答えが出るとは思えないのだよ。相談相手を間違えたな、名字」
「まったくもって同感です」


ひどい言われようだな…
思わず苦く笑ってしまう。
黒子くんに目を向けるとまっすぐに見つめられる。


「彼は、必ず来ますよ。全国の舞台に」


予言は緑間くんの仕事なのに、確信を持って彼はつぶやく。
何処か悲しそうに与えられるその確定事項は、私にとっては胸を内側から痛いほど叩きつけて騒ぐほどの歓喜なのだ




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