稀有なる整った幼顔を歪めて赤司は電話口へ文句を並べた
「だから言っただろ、そう簡単には見つからない」
ため息をつきながら桃色の彼女からの、進歩を感じられない連絡に飽きたと言わんばかりに空いてる手を動かす。
自室内を大きく占める本棚から一冊を適当にまさぐりパラパラ捲る
真剣に追うでもなく、つらつら文字の配列を視線でなぞる。
本に触れて思い出すのはやはり彼女の事。
あまりに執念深く白い肌と紺青を持つ少女が思い浮かぶため、赤司は己の細胞は阿保になったか懸念する
『でも、青峰君の鼻でも見つけられないのにそこにニオイはあるんだよ?』
苛立ちが僅か、声から滲み出している。
印付を行い記憶虫という煩わしい使いを寄越してから名前を狙う妖狐は片鱗を現さない。
桃井にとって不満であり苛立ちであり、はたまた安堵でもあった
目尻に引かれた血のせいで妖狐のニオイは漂うが、それ以上の干渉はなかった。
名前が記憶を喰われたことを聞いた時、彼女は強く誓った事に対しての自責があるのだろう
─これからは何があっても守る
有言実行のために、桃井は影から獲物を狙う蛇と同じく、潜み機会を探っている
「そういえばミドリンから連絡あってね。テツ君と名前ちゃん会えたからあとはむっくんと赤司君だけだよ」
静かな嘆息をついて彼は瞳をぼやかす。
彼女と触れ合った日々を思い出して、柔らかく甘美な体温を恋しく思う
叶うのならば今すぐにでもあのまたとない紺青の輝きをみたい。
いや、己の願いを叶える力だってあるのだ
「なんだろうね…僕はたぶん、少しこわい」
『…あはは、赤司君からそんな言葉を聞くなんてね。でもその気持ち、ちょっとわかるかも』
あの子に触れたときも思い出したって言われたときも手が震えたもん
懐かしむ声音で言ってから桃井は黙る。
今でさえよかったと思うものの、思い出すか出さないかの瀬戸際で過ごしていた日常は、期待と恐怖で埋まっていたのだから
『でもインターハイで此方に来たら名前ちゃんは絶対に会いに行くと思うけど』
「わかってる。だから今はただの悪足掻きだ」
後にも先にも、赤司征十郎が悪足掻きをすることなんて、もうないだろう。
妖狐の件は僕も調べておくよと告げて通話は終了した
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