さらり風が通り過ぎて赤司くんの前髪を揺らす。
私と赤司くんの間には何にもない。
何の問題も挟まずに対面している
「赤司く、」
滲む視界の中で彼の名を呼ぶのを遮って、一年前にひとりで力を持て余していた私の手を引いてくれた優しい手が、頬に伸ばされた
たくさん見てきた余裕のある表情じゃなくて、切なそうなほんの少し泣きそうな顔で私に触れるから。
消えいるほどに私を苦しげに呼ぶから。
涙が溢れるじゃないか
「…ッあか、赤司くん…!」
頬を包み込まれて額を合わせて体温を共有する。
一年ぶりに触れるこのあたたかさ。
もしも思い出さなかったのなら二度と触れることのなかったあたたかさ
あんなに話したいことも謝りたいことも感謝していることもあって、全部伝えたいから言葉を準備していたというのに。
シュミレーションなんて何ひとつ役に立たない
もしもの世界でも夢でもない今この瞬間に私の目の前に赤司くんがいる。
ゆるやかな赤と黄の瞳に私を映してくれている。
これほどの奇跡なんて、この世に存在するのだろうか
「───おかえり…名前」
「ただいまッ…ただいま赤司くん…!」
何か一つと言わずに、すべてをもらってよ
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