白い柔な腕は僕を抱いたまま、椿の植木を眺めながら隙間を縫い歩く。
真っ赤な椿、真っ白な椿、薄桃の混ざる椿
艶やかな美しさに囲まれ、歩き疲れていた僕はその腕の中で安堵を見出した。
あったかくてなんにも知らない腕の中
けれどいつもより景色が色濃く映って
鼻先をスリ寄せればくすぐったそうにさえずる小さな鈴みたいな声
「甘えん坊さんだね?キツネちゃん」
青みがかった黒のガラス玉が優しく僕の世界を埋め尽くす
「でもね、まだ赤ちゃんだから甘えてもいいんだよ」
私がまもってあげる
言葉の意味なんてわからないだろうに囁かれた甘い睦言を僕は真に受けたんだ
「きれいだねぇ椿のお花」
僕に見せるために少し腕をずらして少女は問いかける。
幼顔に向けてキュウと鳴けば、賛同ととったのか愛らしく笑った
「名前ー?」
「あ!お母さんッ!ごめんね、もう行かないと…お家にちゃんと帰るんだよ」
地面へ降ろされて一気に視界が低くなる。
凍えるほどに寒い気がして尻尾を丸めた、もうきっと会えない
あの腕の中に居たかった
ねえ、帰る家に居場所がなかったらそれは帰る場所だと言えるの?