「酒呑童子ってわかる?」
赤司くんに背をぽんと手を添えられ慌てて名乗ると、少しの茶目っ気を含ませながら実渕さんは首を傾げて言った。
ああこれなら知ってるぞと息を荒くして彼に話しかける
「酒呑童子は人間の子供だったときは絶世の美少年だった鬼と云われてますよねっ」
「ええ、まあ伝記上はそうね。でも私がそれを証明できる体かと言われると頷けないけれど」
「そんなことないです!」
ほんのり照れたようにクスクス笑う実渕さん。何を安いご謙遜を。
悪さをしたと云われる鬼だが、その背景には元は人間であり、美しさ故に女性にかなり言い寄られていたなどの細かいストーリーがあるのだ
「…名前ちゃんみたいな人、初めてだからびっくりした」
照れを含んだ苦笑いを作って赤司くんへと告げる。
一般的に脅威とされる鬼だから受け入れられにくかったのだろうか?
実渕さんは物腰が柔らかくて、さりげなく相手のテンポに合わせてくれる、素敵な人だ。
間違っても怖いなんてことはありえない
「妖怪が大好きで詳しいんです。実際、赤司くん達みたいに優しい妖怪ばかりですし。実渕さんも穏やかで格好良くて背も高くて、絶世の美少年という記述の通りですね」
キレイに整えられた指先を包み込んで笑った。
すると瞳が潤いを増して、困ったわねと彼はぽつり呟く
「征ちゃん、私この子欲しい」
「ダメに決まっているだろ」
包んでいた手を逆に引かれ抱きとめられる。
見た目の細さとは反対にしっかり絞られた胸板は存外たくましく、私をいとも簡単に受け止めた。
口調や物腰こそ女性らしいが、大人びた顔付きや鍛えられた体は男性そのもので、思わず頬が熱くなる。
一見実渕さんは中性的に感じるが、赤司くんや黒子くんの方が中性的なのかもしれない
「み、実渕さ…」
「玲央って呼んでよ」
「ひえッ」
耳元で低く呟かれた声に思わず奇声を上げてしまう。
あんな色気に耐性あるほどの経験値はない。
ちなみにイケメンに対する耐性は赤司くんを始めバスケ部の皆でつきました
「玲央」
地を這うような妖力と声に実渕さんはパッと離れる
「勘弁してよね、天狐には敵わないんだから」
「なら弁えるべきじゃないのか、鬼」
脇腹に赤司くんの腕が回り込み抱き寄せられる。
よくわからないが赤司くんの機嫌が急下降した
「玲央、先輩…」
美丈夫は何てことのない、と言わんばかりに微笑んだ
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