──嫌な予感がする


すべてを炙り出そうとせんばかりの日差しを避けるように出来た木陰のテラス席。
赤司、名前、紫原は昼食を摂っていた。
背が高いどころではないほどの上背を持つ一人と、めずらしい髪色、極めつけの美しい面立ち

注目されるには十二分な要素が合わさり、淡い桃色の感情を含む強烈な視線に名前は居心地悪げに肩身を寄せていた

そんな彼女を気遣いながら赤司は眉を誰にもわからない程度に顰める。
天狐はよく鼻が効く上に、彼自身の持つ天性の勘の良さで、ソレを嗅ぎとった


「赤司くん?」


左隣にいる彼女が気遣わしげな色をした紺青で覗き込んできて、わずかに息を飲んでからなんでもないと返す


「ねー赤ちん、東京って本当、メンドイね」


紫原も鼻がいいわけではないが不穏なソレを感じ取ったのだろう、一心不乱に動かしていた口と手を止める。
鬼は、気配を消すのも上手い


「どうしたの?」
「んー…もうこの店出よっか名前ちん」
「え?でもまだ食べ終わってないし、紫原くんの食べたがってたガトーショコラも…」
「いや、店の人には悪いが出よう」


赤司にまで言われれば、名前も何かあるのだろうと察しがつく。
席で待ってて、と会計を済ませるために立ち去る赤司と紫原へお金を渡そうとすればやんわり財布をカバンへ押し戻された

ご馳走してもらうのに残すのは心苦しいと名前は眉を下げる。
食べきれなかったガトーショコラを小さく崩し、白い肌に映える赤い唇に運ぼうとした時、その腕が他の誰かによって奪われる


「…え?」
「やはり美味しいですね、ここのケーキは」


ニコリと夏の日差しをモノともしない優等生の笑みを浮かべて、その人物は彼女を見下ろす。
品定めしてくる視線から逃げる術を彼女は持たない



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