「青峰くんッ!」


彼のクラスに駆け込んで入口から見つけた彼に出来るだけ小声で呼びかける。
青峰くんは有名だ。バスケに関わらずその容姿や言動、何もかもが生徒の気を引く

だから可能な限り目立たないように彼を呼んだのだが、青峰くんは友達と思われる子と一緒にいた


「おう名字。どした?」


そばに来て頭を撫でてくれるのは嬉しいのだが彼と話していた茶髪の男の子がいる手前、妖怪のことを気軽に口にはできない


「あのね、えーと…困ったことが起きて相談したいんだけど、お昼休み屋上に来てもらえる?」
「いいけど…ソレって妖怪関係か?」


茶髪の子に聞こえないよう耳元で囁かれた声に赤面する。
青峰くんの声は低くて艶があって、心臓に悪いのだ
どぎまぎしながら肯定する


「お前になんかあったわけじゃないんだな?」
「うん、私ではないんだけど…」
「わかったからンな顔すんな。助けてやる」


乱雑に撫でてから青峰くんは席へと戻っていく。
茶髪の子と目が合ったがなぜだかスミマセン!と割と大きな声で謝られた



さつきちゃんにも連絡をし三人で屋上に集まる。
日差しを避けて影になっているところで三角形を描く


「それで、どうしたの?名前ちゃん」


パンを食べながらさつきちゃんに問われる。
驚いたことにさつきちゃんはお昼ご飯は購買のパンが定番らしい


「うん…たぶん、なんだけど友達に呪が憑いてるみたいなの」
「あ?呪?」


随分と可愛らしいお弁当を食べていた青峰くんが反応する。
丁寧に作られたお弁当だけでは足りないのか傍らにパンの入ったビニール袋まで置いてある。
どんだけ食べるんだろうか…


「初めは黒い靄が友達から見えただけだったんだけどすぐ黒猫の形になったの。呪のことは中学の時に黄瀬くんと緑間くんに聞いてたから」
「黒猫か」
「うぅん…少しだけ厄介かもね」


さつきちゃんと青峰くんは少しだけ渋い顔をした。
私は呪と呼ばれるモノは黒猫しか見たことないが、何種類かあるのだろうか?
疑問が顔に出ていたのか、さつきちゃんが私の顔にかかった髪をやさしく払ってから説明してくれる


「呪は何種類かあるの。何を模すかは呪をかけた人の怨念の強さによるんだけど、一番良くないのは蝶で黒猫は三番目くらいに良くないかな」
「蝶が一番良くないの?」
「冥界に連れこむって云われてるからな」


パンの包装を開ける小気味良い音が響いて、青峰くんは言う


「黒猫は死にはしないけど事故にあって欲しいだとか病気になって欲しいとか、そんなモンだな」
「その友達のことを疎ましく思う人が、いるのかもね…」


思わず絶句する。
そんな、まさか。
彼女は他人の不幸を願うような子ではないし、悪口も言わない。
明るくて優しい子だ、私が桐皇に入って知人もいない時に声をかけてくれて仲良くしているんだもの

でも妖怪関係なら、少なくとも無力ではない


「……私が何とかしたい。どうしたらいいか教えてくれる?」


今までたくさん青峰くんや赤司くん達に助けてもらったんだ。
私のこの力で出来るなら、彼らにもらった勇気で誰かを助けたい




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