意思を持って誰かを──私ではない他者を標的としている妖怪を、初めて祓った。
靄は意思があるというよりも力に引き寄せられているだけのようなものだった

けれどあの黒猫は明確な意思があって友人に憑いていたんだ。
かなしいと、心が軋む

灰崎くんの操る靄に襲われた時に赤司くんは救われない妖怪もいるのだと言った

それならば少しでも彼らが苦しい思いをしないように
さみしいとかかなしいとか、自分が妖怪であることに負い目なんて感じなくて済むように私はこの力を使って行きたいと思った

どういう風に使うかなんてわからないし、そもそも必要ないのかもしれない。
ただ私という存在が、みんなのために在れたらと、傲慢にも望んだのだ


「…あの猫はどうなったの?」


青峰くんとさつきちゃんに問う。
責めてなんかいない、純粋にどうなったのか知りたい


「消えたよ」


無表情な彼女
呪は消えるべき存在なのだろう


「そっか」


あの呪が消えたならそれでいい。
また漂うようなことがある方がかなしい。
救われたと、自己解決するしかないのだ

二人が私に祓わせてくれた理由。
悪い妖怪もいるということ、誰かの悪意によって生み出された呪なら祓うのが最善だということ

───悪さをしたなら、野放しにはしておけないということ

誰にでもやさしくするだなんて、そんなのはいつかきっと他の誰かを傷つける


「……ありがとう、二人とも」



手間をかけさせてしまったけど、二人の負担を減らすことはできたかな

眠っている友人の頬を撫でる。
しっとり汗ばんでいて、伝わるぬるい温もり。
彼女に呪をかけた人を見つければ、平穏な毎日に戻れるから


人間も妖怪も楽に生きるなんてできない
罪と罰がある、それを与うモノと与えられるモノがいる

──ならば、私の罪と罰をどう受け止めようか



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