柔らかい色の髪を風に揺らして立っている細く白い体。
近づく蜂蜜色の見慣れた髪色を持つ先輩。
後ろから眺めているような視界で、突然予言を映された


起きているときに未来を視せられるのは久しい。
視たものからするともうすぐ彼女と宮地さんが接触するから急がなければ

普段よりも駆け足になりながら慣れた道を歩めば、やっと宮地さんの長めの金髪が前に見えた。
それでも中々に追いつけず、いつも高尾にチャリアカーを引かせているからこうして通学路を駆けるのは新鮮な気持ちになった

校門前にいた紺青が、何かを探すように一周する。
俺を探したのだろう、気づかなかった彼女はぼうっと景色を眺めた。
彼女を視界に捉える俺と同じ橙色のジャージの、先輩


宮地さんの方が早かったか


内心舌打ちをする
あの人は少々面倒くさい


「名字!」


ハッとした紺青が宮地さんから俺に移る。そのことに感じる、わずかな優越感。


「緑間くん」


安堵でホッと吐かれる息。
宮地さんは人気はあれども愛想はないため、人見知りな彼女にとっては拷問に近いだろう


「すまない、待たせてしまった」
「平気だよ。おはよう」
「おはよう」


人見知りしている時の控えめなものではなくて、華やぐ笑顔。
この笑顔のためなら隠していた、人間とは異なる象徴として忌みしていた妖怪の力だって、駆使する


「おい緑間!俺を差し置いて会話してんじゃねーぞ!どういうことだコリャ、場合によっちゃ轢くぞオラ」
「…ああ、すみません」
「すみませんじゃねえよ、お前は俺のことなめてんのかー?」


にこやかに青筋をたてられてもいつものことなので軽くあしらう。
宮地さんの言葉遣いに名字は明らかに戸惑っている。
彼は真面目でストイックで尊敬できるが、言葉遣いだけは良いとは言えないタイプだ


「宮地さん。彼女は帝光の同級生です」
「あっ、えと名字名前です」
「名字、こちらはバスケ部三年の宮地さんなのだよ」
「……宮地清志だ」


ちなみに宮地さんも妖怪だ
そう言えば彼女はもとから大きめの瞳をさらに大きくして見せた。
彼自身はフン、と鼻を鳴らしていたが文句言わないあたり彼女の違和感には気付いてるらしい


「何の妖怪ですかッ!?」
「!?」


俺たちのことにも動じない彼女のことだから驚きはしないと思ってはいた。
しかしコレは食いつきすぎではないか


「名字、離れるのだよ」


白魚のような、するりとした手をとり引き寄せる


「宮地さんは天狗なのだよ」
「…俺は、天狗だけど」


俺が言うのと宮地さんが照れ気味に言うのはおそらく同時だった
ていうか何照れているんですか



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