今日は桐皇と霧崎第一が練習試合をする。
桃井から鵺の干渉も天邪鬼の手出しも聞いていた、だから彼女をこちらへ呼び寄せた。
名字を探す天邪鬼が視えたから




「休憩に入ったらドリンクとタオル渡してミニゲームのときはスコアつけてればいいのね?」
「ああ。スコアのつけ方は最初は俺が隣で見ているのだよ」
「ん、ありがとう」


十月に入っても運動をすれば充分に汗をかく。
しかし熱気の充満する体育館とはいえ彼女自体が動くわけではない


「名字、これを着ておくのだよ」
「ん?」


頼りないその細い肩に、剥き出しの二の腕を隠すようジャージを羽織らせれば、女性特有の華奢さが強調された


「わー、やっぱり大きいね緑間くん」
「お前がこのサイズでピッタリだったら怖いのだよ」
「確かに。へへ、緑間くんの匂いがする」


余った袖口を顔に寄せてはにかむものだから、思わず赤面してしまう


「なッ!何を言い出すのだよ…!」
「なになに、彼シャツならぬ彼ジャージか?やるなぁー真ちゃん」
「うるさい!」


茶化す高尾を追いやって乱雑に彼女の頭を撫でて基礎練に混じる。
普段より集中できない

宮地さんには背中を叩かれ大坪さんには連れて来たならお前もきちんと練習しろと言われた


「…何が目的なんだよ」


パスワークの練習をしながら隣に来た宮地さんに問われたが言い淀む

──要は、個人的な理由なのだ。
桐皇には青峰も桃井もいる。
鵺や天邪鬼の対処など手に余るだろう

しかし不安なのだ。
赤司がいたって記憶を喰われた彼女。
もしまた己の手の届かぬところで脅かされたら

その時俺は、どうすればいい?
わからないから、だから助けてほしい、だなんて


「今日彼女の学校に霧崎第一が赴いて練習試合なんです」
「だから何なんだよ」
「霧崎第一には天邪鬼がいるのだよ」
「天邪鬼ゥ?…ああ、悪童の花宮か」


それがどうしたんだという顔をされる。
仕方ない、彼女と俺たちのことを知ってるのは限られた六人のみだ。
この不安も焦燥感も絶望も共有できるのは妖怪であり、キセキである自分たちのみ


「花宮は以前名字に会った際、瞳を喰らいたいと言ったそうです」
「は?」
「桐皇には狼と白蛇がいますが、同時に鵺もいて油断ならない」


普段、名字を守っているのは主に青峰だ。
土日まで危険は及ばないと思うが、天邪鬼は何を考えているかわからない。
桐皇から徒歩圏内に住む名字に出くわさないとも言い切れなかった

そもそも霧崎第一が桐皇と練習試合を組むだなんて、名字が目的だとしか考えられない


「彼女には特殊な力があります。あの瞳にもおそらく力がある。それを鵺も天邪鬼も欲しているんでしょう」


暇つぶし程度に。


「特殊な力ってなんだよ。つか俺さっきから質問してばっかなんだけど。もう少しわかりやすく話せよ焼くぞ緑間ァ」


無理です、と返しながらボードを倉庫から出してきている名字を呼ぶ


「なぁに、どうしたの?」
「有坂、宮地さんに力を使ってみせるのだよ」
「えッ…」


ピシリ
固まった彼女と怪訝そうに眉根を寄せる宮地さんだけが残った



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