俺の予言を破ってほしい


たった一声の大きなキッカケ





本来ならば着ることのない橙色のジャージに包まれながらキュッキュッと鳴る床を走り回る

秀徳にマネージャーはいなく、部員の人たちがやっていた雑務を引き受けている。
気づけば次から次、流れるようにやることが舞い込んできた

慣れないながらも動いていればありがとうと言ってくれる人がいて。
こうして私が頑張ればまわりまわって緑間くんが練習に集中できるお手伝いになるかなぁだなんて考える


「えっと…」
「それはコッチ」


部活が終了時間になって使った物を片付けていれば、当然通っているわけではないため仕舞い所がわからない物もあって。
似たような物が陳列されている場所辺りを探っていると後ろから色白の腕が伸びてきた


「宮地先輩」
「おう。慣れないのにサンキューな」
「いえ、私が押しかけてしまったので…あ。力を強引に使ってしまってすみません」


宮地先輩は最初私を警戒する素振りを見せていたが何があったのかそれもなくなったらしい。
蜂蜜色の髪によく似合う整った顔立ちを柔らかくゆるめて笑う


「お前の力ってすげーのな。初めてだわ、あんなん」
「私もびっくりです」


自分にあんな力があるなんて
苦く笑えば彼は髪色と同じ瞳に真剣な光を灯して私に向き合った。
赤司くんの片目に近い色。
でも鮮やかな赤色とも黄色とも違う、薄めの黄土色

──赤司くん

いつも手を引いてくれる赤い髪
いつも助けてくれる青い瞳
いつも見守ってくれる緑の瞳

黄色も桃色も紫色も水色も。
私を彩る大切な人たち
自身の核心に、少しだけ触れる


「名字は本当は何のためにここに来た」


怖いまでの真剣さにきちんと返さねば、と息を吸って、緑間くんに呼ばれた旨を話す


「緑間くんの、予言を打ち破るためです」


緑間くんの視た予言はこうだった。
何も対象物がない空間に向けて手を伸ばす花宮さん、抵抗したのか振り払われるその手には、次の瞬間には見覚えのある紺青が浮かんでいた


「…な、」
「彼は、私の目が花宮さんに食べられる予言を視たようなんです」


ほんのり笑みが浮かんできてしまう。
こんな怨念から授けられたような瞳がこうもめまぐるしく輪の中心に出てくるとは。
持て余していたモノを磨かれた時にこのことはもう決まっていたのかもしれない


「…それで俺に会わせたってわけか」
「え?」
「お前だけじゃ予言は打ち破れない、お前は力はあるが妖怪ではないからな」


少し、その分け隔てが悲しくて俯く。
どう足掻いたって同じ土俵には上がれない


「天狗は神通力を持っている。そしてその神通力は、唯一件の予言を打ち破ることができる力だ」


驚きに目を見張れば宮地先輩はただ条件があるが、と言う。
大天狗の神通力にのみ件の予言を破るまでの効力があり、そしてそれは大天狗が本当に望まない未来を読まれた時にしか発揮されないとのこと

彼に信用され、予言を打ち破るにたるほどの人間と、判断されるのだろうか



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