ボールを操りながら走っている最中、ふと目の前がくらり、歪む。
見えているのは体育館の慣れた黄色の床ではなくて、愛おしいさらりとした髪と白い頬。

細い首筋に掴み上げる黒い人を模した靄は、ああ、そうか──


「大丈夫?征ちゃん」


玲央に肩を掴まれて我に返ると足元には力を失ったボールがコロコロ転がっている。
レギュラー達が可笑しなモノでも見るように突然停止した僕の反応を訝しがっていた


「いや…お前達で練習を続けていてくれ」


妖怪?
ぽそっと呟かれた言葉に小さく頷いて、携帯を求めて更衣室へ向かった




体育館の鍵を掛け、高尾を先に帰らせ宮地と緑間、名前は三人で玄関を目指す。
このまま帰路についても予言を完全に免れたとは言えない。
基本的に予言は絶対だからだ

宮地はほとんど妖力を使わず生きてきた。
人間として生きるなら、ソレは必要ないから。
だが緑間と名前にその力を求められた時、使ったことないはずなのに頭に方法が思い浮かんだ

本能が教えているのだ、妖怪であると


「今日一日サポートしてくれたからな。お前のその目がなくなるのも惜しい」


ニッと悪戯げに笑った宮地は下駄箱に寄りかかりまぶたを下ろす。
何を言おうとしたのか、名前の開きかけた口と宮地へと伸びた右手を緑間が止める

紺青をしっかり捉えて首を振った
彼を、宮地を信じろということらしい


「…いた」


呟いたかと思うと、蜂蜜色とは違う橙の強く輝いた瞳を開けた。
一瞬の間。
空気が重くなったのをはっきりと感じて名前は腰が抜けかけたが、腰に回った緑間の腕に助けられる


「、終わった」


強い橙に射抜かれて思わず、名前は息をのむ


「さすが、早いのだよ」
「あー…その代わり目がいてぇけどな」


曰く、千里眼を使い対象の妖怪を見つけ、神通力によってその思考を操作する。
他者の思考・意思を操れるのは大天狗の、件の予言を変える時のみ

名前はあくまでも思いのままに無理矢理動かす。
宮地の力はソレさえも己の意思だと思い込ませることが出来る。


「ありがとうございます」


名前は安心したように穏やかに笑う
まだこれからだ、とひそやかにナニかが黒く笑った



returm next




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