冷たい空気の中、茹だるほどの人混み。
ウインターカップの会場は試合前ということもあり高校生、一般観戦の人が多く入り乱れてる。
その中から柔らかい一人を探す


「お待たせしました」
「黒子くん!」


マフラーから隠れていた口元を出して彼女は嬉しそうに笑う。




予言は二つあった。
花宮さんが名前さんの瞳を喰らう未来、そして彼女に取り憑く妖狐に襲われる未来

しかし花宮さんの方が危険性が高いため、件からはそちらが優先されたのだ。
件の予言は一度にひとつしか視れない、そして何が視たいかも選ぶことは不可能。
だから緑間君は名前さんを秀徳に呼んで予言を回避したつもりだった


誰も、悪くない。
赤司君が名前さんに血分けを行っていたおかげで彼女の危機に気づけた。
あの時、走りながら耳元で淡々と説明する涼やかな声にはすべてお見通しなのかとほとほと嫌気がさしたものだ


──緑間君が不憫ですね


大天狗の神通力でしか打ち破れないはずのモノがこうも先読みされてしまうのだから。
涼やかにきこえていたソレだって、ものすごい不機嫌さを乗せてきていた


涙を流し気絶する彼女を抱えるのは二回目だが、慣れることなどこの先一生ないんだろう。
心臓が針のように鋭利になって内側から打ちつけてくるから、安堵なんて出来やしない。

それでもその時の焦りなんて知らずに彼女は、絞められた首元を隠して僕に微笑む


「今日は黄瀬くんの試合だよね」
「はい。…対戦校は灰崎君の学校なので、名前さんに見せたくない気持ちもあるのですが」
「ふふ、平気だよ。ありがと黒子くん」


黄瀬君はどうしても名前さんにこの試合を見て欲しいとめずらしく真剣に言っていた。
中三の時に何も出来なかった自分への区切りなのだろう、くよくよしているのは彼には似合わないから良い傾向だと思う


「ウインターカップもかなり進んだね。私みんなの試合観たことなかったから嬉しい」


あ、でも緑間くんの練習はお手伝いしたから見たんだけどね
そう言う名前さんに少し口角が上がる。
バスケを見て嬉しそうにしてもらえるのは、心があたたかくなる。
これを、かつての仲間にわかってほしくて僕は青峰君に勝った

でもそれは僕の自己満足でしかなく、彼女にとってそれがよかったかなんてわからないし押し付けでしかない


「これで青峰くんがつまんなそうな顔することも、黒子くんがさみしそうにすることもなくなるね。青峰くんたら、部活しないで帰る時カバン持つのも面倒そうにするんだよ?」


クスクス肩を震わせる彼女に僕はどうしようもなく救われてしまう。

熱気の篭る会場内に入って席に座れば長い睫毛をパタパタと瞬かせて、頬を高揚に染めた


「わー!すごいね!あッ黄瀬くんいた!」


まるで子供のようにはしゃぐ彼女が眩しくて、なんとなく涙腺がゆるんで、それを見つけた彼女は僕の手を握った。
困惑という感情を消し去るために笑ってみればそれは失敗に終わって、なんだか余計に泣きたくなった。



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