試合は黄瀬の圧勝だった。
それもそうだろう、灰崎はもとより赤司に黄瀬以上の見込みはないと判断され退部させられたのだから。
その後の時間を黄瀬は色濃くバスケに費やしてきた。
力を奮うだけの彼では、勝てない。
「…これで、借りも全部返したっスから」
「あ?」
名前ちゃんに毒喰わせた分
吐き捨てれば今の今まで忘れてたというように瞠目した灰崎は歯を軋ませる
「またあの女かよッ…」
黄色の後ろ姿にいつかのキセキが重なる。
妖怪憑きにも人間にもなれない自分が他人より秀でていて認められていたバスケ。
妖怪憑きである彼らと肩を並べられていた箱庭だったもの。
安易に蹴落としてきたのはまたもや妖怪憑きで、完全に奪い去ったのは、ただの人間だった。
あの女に直接手出しできないなら黄瀬にしてやればいい
夕闇に浮かぶ灰崎のニヤリとした笑みはナニかに取り憑かれたように不気味だった。
細やかに体が震えるくらい冷たい空気の中純粋な笑みを浮かべて喋り掛ける少女と、やわらかく、慈しむよう包み込む黄瀬
握り拳をつくって、もう此の手は彼らとボールを繋ぐものではないという決別を込めて
「闇討ちならやめとけよ」
「!」
うっすらと妖気を暗闇に混ぜて青峰は灰崎に釘を刺した。
負けたのが悔しいとかそんなものではないことは青峰にもわかっている
「なんだよダイキ。お前まであの女の御守りか?」
「…ちげぇよ」
「ならなんだよ、正義感で俺を止めるってか?」
頭に血がのぼっている彼からはもうヤケになった挑発の言葉しか出てこなかった。
それを、狼は少し悲しく思う。
「なあ。妖怪憑きもキセキも、他人からの呼び名でしかないって俺は思ってる」
「…ご自慢かよ。テメェは俺と違うってことかよ!?」
「いいや。お前はお前だよ」
名字ならそう言うだろうから
殴りかかってきた灰崎にそれが聞こえていたかは定かではない。
けれども少しでも伝わっていればいいと、己の拳で気絶した犬神の呪いに憑かれた彼を見る。
「言ったろ。妖怪憑きでもただの人間でもなくても、お前はお前なんだよ」
──救われないモノもあるなら、私がその存在理由になれればいい
そう言って笑う少女が教えてくれた。
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