紺青の自ら光を放つ瞳。
自然では生まれ得ない、虹彩

なぜそれを名字名前が所有しているのか。
なぜそれは赤司と出会うまで本人も気づかなかったのか。
なぜ、ああも無意味な奇襲があったのか。

それはそれはツマラナイ、一匹の妖狐の欲望



名字名前の家系は霊力を瞳に宿し、その瞳を原動力として声を以って妖怪を服従させることが出来た。
が、その事実は家系の人間ですら知らず。

代々力が受け継がれた者が防衛本能をきっかけに覚醒したとき、本人のみが知ることとなるモノであった

ある時、妖狐は美しい男と出会った。
当時にしてはめずらしく薄い色素の髪で、輝かしい紺青の瞳を優しくさせて、山に取り憑く天狗と話していた


──人間であれば、コレは恋と呼ぶのだろう


『お前も迷い子なのか?』


天狗は格下の妖狐をバカにしたように鼻で笑って山の方へ去ったが、美しい男は妖狐に、その美しい声音で語りかけてしまったのだ

そこから始まる螺旋階段のように果てのない因果は、赤司も一部しか知らない。




男の声に聴きいって惚けた妖狐は逃げ出した

あの声を聞いた途端に感じた服従感はなんだ?
あの瞳の輝きは?

疑問と共に走り抜けて止まった時、思ったのだ。

ほしい
力がほしい
瞳がほしい
声がほしい
あのニンゲンが、ほしい

妖狐はあまり知恵を持たない。
天狐になれずくすぶる弱いモノ
だからかうまく男から力を奪うことはできなかった

男が死んで、次に生まれた女が覚醒して、またその美しい瞳と力を持つ声を奪えぬまま死んで。


そして時の流れもわからぬ頃に名字名前が生まれた
薄い色素の髪に整った顔立ち、白い肌

初めて見た男が戻ってきたのだと思った。
今度こそこの手に入れて、二度と死なぬように。


天狐と接触して本格的に覚醒したあと、機会を伺って研ぎ澄ませて。
蛟のニオイのする図書室へ向かう彼女から咄嗟に思い付いた、知恵の少ない安易な作戦

僅かしかない妖気に誘われて蛟は知らず知らずにきっとこの本をとる。
それをこの娘は守ろうとするだろう─
そして記憶虫に喰われて空になった器に、己が入って生きるのだ


だんだん暴走していく自身に気づかずに欲望のまま動く
あの美しい男のように生きたい、と。



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