自分の実力を下回るモノには興味ない。それはバスケでも妖でも例外なく同じだった。
名字のことは赤司がこだわるから手を貸していただけだし、さつきとテツも入れ込んでたから守ってた

小手先だけの軽いものだったはずなのに


「青峰君こっち!」


さつきが俺を目敏く捉えて大声で呼ぶ。
うるせーな聞こえてるっつーの
妖力を抑えてるとはいえ、普通の人間に比べれば格段に音を拾う耳。
気を遣えって言ってるのに十数年経ってもこの蛇の幼馴染はしない


「名前ちゃん、ガングロで目つき悪くてイカついけど赤司君と今吉先輩に逆らえないヘタレの青峰君だよ」
「殺す」


さつきよりも色白で華奢な彼女と、こうして真正面から瞳を合わせるのは初めてだ。
なるほど
聞いていた通りキレイな色だ
ヤワな小せぇ手を口もとに当てて、長い睫毛が頬に影を落とす

なんつーか、ヒトミシリ?
おとなしくてうじうじした奴は大嫌いだが、彼女はどうしてか穏やかで儚い雰囲気が似合っていて、嫌な気はしない。
ただ天狐と妖狐のニオイが強くて、それが鼻につくが。


「初めまして、青峰くん…名字名前です。今までたくさん気を遣って守ってくれて、ありがとう」


ふわり
花が咲くみたいにして笑みに包まれる。
あいつらが大切にして手を差し伸べる理由がなんとなくわかった。
妖怪としての力を他人に認められることはほぼない。
人間にとってワケのわからない力は弾くべき対象でしかなかった

なのにコイツは、いとも簡単に欲しいモノをくれるから


「黄瀬にもテツにも、電話でいいから連絡してやれ」


─喜ぶぞ
瞳とはちがう色味の艶めいた髪を撫でればはにかんで、また彼女は俺にありがとうと笑うんだ



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