今吉先輩の方へ首を向け威嚇をしてる桃井さん。
確かに怖い雰囲気を出されたが、そこまで警戒するものだろうか?


「桃井さん…」
「そぉーんな睨むなって、ほんの冗談やないの。な?」
「…もういいです」


拗ねた表情をしてほんのり期待の乗った桃色がまっすぐ向けられる。
ぽんぽん背中を軽く叩いて安心させ、今吉先輩へ口を開く


「先輩。私の力は赤司くんや桃井さん…青峰くんたちみんなのために存在しています。彼らには必要ないかもしれないけど。だから」


あげれません
ちょっと怖いけど決して目は逸らさずに。
感情が隠れていた瞳が見開かれたあとすぐに優しく細められた

─あ、こんなカオもできるんだ

今度は私の頭が撫でられる。
ならしゃーないな、だなんて全然気持ちのこもってない台詞を吐かれた

わざわざ休憩にしてまで私を見に来てくれてたらしく、桃井さんにあと五分したら始めるでとだけ言って体育館へ入っていく

桃井さんはまだ私にしがみついたまま。
とりあえず落ち着くまでこうしていよう
さっきの威嚇して鋭い雰囲気は彼女にはあまり似つかわしくなくて、出来ることならもうさせたくない

日に当たっても変色せず、美しく輝く髪をするする梳く。
中学のときから長いよね、ずっと伸ばしてるのかな?
こんなにキレイならロングが一番映えるもんね

ぼうっと考えていると腕の中がもぞもぞ動く感覚


「落ちついた?」
「…うん。ありがと、ありがとう名前ちゃん」
「ふふ、お礼言われることじゃないよ」


笑って背中を押す
終わるまで待ってるから練習に戻りなよ
彼女は少しだけ不安げにしながらも、私の小指に自身のそれを絡ませてきた


「約束ね」
「うん。絶対守るよ」


もう無責任に忘れてどこかへ行ったりなんかしない


「あのね、今吉先輩は鵺なの。力も未知数だし、加えてあの性格で本当に読めないんだよねぇ」


ぬえ。
名前は知ってるけど、確かにはっきりどんなことをした妖怪だとかはわからない


「じゃあ桃井さん待ってる間に鵺のこと調べておく」
「ごめんね。嫌な思いさせちゃったかな…」


これっぽっちも桃井さんの謝ることでもなければ嫌な思いもしていない。
……ちょっぴり怖かったけど。
今吉先輩も嫌な人じゃなさそうだし、全くもって平気だ

練習終わるまでに青峰君を呼び出しておくから!
そう言いながら走って部活に戻る彼女を見送った



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