まず選ばれて生まれた感情はとてつもないほどの疑念だった。
選ばれるのは当然赤司っちだと、可能性があったとしても同じ高校の青峰っちだろうと半ば諦めながら帝光中まで来た
───彼女は俺を選ばない
目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませば、クモの糸からの情報網が頭を巡る。
青峰っちと紫原っち以外は揃ってる
赤司っちの、天狐の、絶対的な力
何を以ってしても女郎蜘蛛にはそれを越えられない。
胸の底の苦しみを吐き出すように深い息を長く、押し出す
選ばれるために行くわけではない。
俺は蜘蛛の妖怪を統べるものとして、彼女の行く末を見守りに行くのだ
そう思っていた、のに
「私は、私は──黄瀬くんが、欲しい」
無理やり平静を保っていた水面に、大きな雫が落ちてきて、ぐわんぐわんと揺れ波紋を生み出した。
───波乱と困惑を生む夏の始まり