うつらうつらと泳ぐ意識の中に、淡く雪みたいに、消えていく。
俺は少しでも君と繋がっていたと思っていたい
それが決別の運命だとしても、糸を切りたくないんだよ
長い道程の途中からであっても、欠かせない存在
「──瀬君、黄瀬君!」
「っ、あ、な、なに?」
「何じゃないよ、もう!これから部活なんだから、ちゃんと頑張ってね」
胸元まで艶やきながら伸びる髪は、焦がれる彼女のそれと一致しない。
「うん、ありがと」
じゃあねと手を振ればまた明日ねと返される。
また明日、俺は一体誰に会って何を言えばいいんだろう?
酷いことだとは実感しているが、先ほどの子自ら俺が部活に行く途中なのを遮り付いてきたのだ
「おい黄瀬!呆けてないでさっさとアップしろよ!」
「…ッス」
バスケをしていると、卒業式のあの日を思い出す。
彼女は、白雪ちゃんは、俺たちの今まで何の役にも立たなかった妖力で出した淡い光に頬を染めて喜んでくれた
その笑顔が守れればいい
高望みなど、してはいけない
彼女に俺が血分をするには犠牲が必要だった。
『──君が選んだのなら何も言わない。ただ、黄瀬の血分をすることは特殊パターンだ』
『特殊?』
『ああ』
そう、女郎蜘蛛としてクモを統べる俺が、天狐の血が入っている白雪ちゃんへ血分を行うことは妖怪の世界でのルール違反にあたる。
いわば、
『天狐─…妖怪の頂点に立つ者への挑戦状、ということになるかな』
赤司っちは余裕を見せて笑う。
俺には表情を取り繕う余裕などないというのに
『じゃあ…黄瀬くんは、ダメなの?』
恋しいような瞳で俺を見ないで。
甘えるように赤司っちを頼らないで。
ああもう、どうしたらいいかわからない
『そんなことはないよ』
『!じゃあ、』
『ただし、君の瞳を黄瀬に喰わせる』
『赤司っち!』
理解はしていたが、言葉にされると
『わたしの、瞳を…?』
『と言っても眼球がなくなるわけじゃない、なんと言えばいいのかな…君の体にはもう先代からの力と、妖狐の力が混じっている。その力は瞳が一番強い。それを黄瀬に──いや、女郎蜘蛛に捧げることによって、天狐の血を遮ってでも女郎蜘蛛の配下にすることができるんだ』
天狐には逆らえない、だからその血分をされた配下の白雪ちゃん本人から体の一部を与えられることによって、天狐の立場を守りつつ女郎蜘蛛の配下にできる
瞳は恐らく今後光を見ることはないだろう
そして色素も、妖力のない人間からでもわかるくらいに変化する
『さあ白雪、選ぶといい』
───汗の流れる前髪をタオルで乱雑に拭き、着替えを済ませる。
携帯を確認して、どくんと嫌に音を立てるその名前からのメールは、開かない
「お疲れっしたぁー」
適当に切り上げて、一人校門へ向かう。
黒子っちからも青峰っちからも連絡きてたけど、一切を断ちたい気分だった
「──涼太くん」
「、え」
くん、とシャツを引かれる気がして振り向けば、左右異なる色の、瞳
「白雪、ちゃん…」
「メールしたけど返信ないから来ちゃった」
躊躇いなく強い瞳で、俺に瞳を喰われることを了承した白雪ちゃんに、俺は甘えてしまったのだ
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