白雪の体には、先祖から授かった力と、天狐の血が入っている。

そこに、白雪自身が選んだ黄瀬の血を入れようとすると、問題が生じる


妖怪間の上下関係は絶対だ


天狐の上に女郎蜘蛛が立つことはあり得ない。
蜘蛛の糸は狐火には弱い

下剋上とも言えるこの行為を問題なく行うには、彼女自身からの、女郎蜘蛛への体の一部分の献上が必要となる。
いわば、見せしめである。
これをすることによって天狐は女郎蜘蛛に配下を取られたわけではなく、配下の意思によって格下についたと証明できるのだ

その代償が、白雪の場合は、瞳


「…片目だけで、いい?」
「ああ、充分だよ」
「……」


黄瀬は、何処か他人事のように彼と彼女のやりとりを見ながら、内心の焦りを強く感じた
脇役だったはずだ、と焦燥に駆られる脳内にはそんな言葉しか浮かばないが、ただそれに対する抗議の声が出てくるわけでもない


「いいか、黄瀬」
「あ、赤司っち……」
「…ごめんね、黄瀬くん」


それでも、あなたがいいの
柔らかなまなざしをより一層あたたかくし、彼女は黄瀬に告げる


「黄瀬くんはどうやって食べるの?紫原くんみたいに?」
「いや、黄瀬の血を少し飲んでもらって、その体内に入り込んだ妖力を通して瞳から妖力を奪う」
「オイ、赤司」


白雪と赤司の会話に青峰が批判的に入り込む。緑間も口にはしないが、決していい表情ではない
ふ、と苦笑を漏らした赤司は思う


俺だって好きで彼女が他の男を選ぶのを手助けするわけではないさ、と


自嘲気味とも見えるそれを隠すこともせずにいれば黒子に青峰、緑間は唇が縫い付けられたかのように黙した


「で?黄瀬ちんはなんかないワケ?」


紫原の多少なりとも責めるような言い方に、言外に白雪を止めよ、という意味合いが明らさまに見て取れる。
軽く手を挙げ、赤司がそれを止めた


「君は俺の条件を聞いて、こいつらの反応を見て、それでも選んだことを悔いはしないんだろう?」
「うん。ごめんね、みんな」


ありがとうなどとは言えなかった。
決して仲違いしてほしいわけではないのだから


「黄瀬くん」
「白雪、ちゃん、」
「私と一緒に生きてくれますか」


苦笑混じりに言われたそれに、情けなくも黄瀬は涙を流して、これ以上何かを失わせたりしないからと。一生をかけて守るからと、強く白雪の細い手を握るのだった



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