来ちゃった、とおちゃらけて笑ってみたものの、黄瀬くんの反応はほとんどなかった。
驚いたのだろう、固まったままいたかと思えばハッと少しだけ泣きそうな顔をする
泣きそうなこの顔は私がさせてしまっているのは、重々承知しているんだ
それでもあなたを選んだ私を間違いだとは思わないから。
あなたが記憶を取り戻した私を見て泣いたように、あなたのものになってやっと会えたあなたに私は笑うよ
「…んで、」
「なんでって、全然連絡、出てくれないから」
「それは……ごめん」
距離を縮めようと血分を行ったあの日からなるべく名前で呼ぶようにしてるけれど、未だ慣れなくて照れくささも取れない。
いつもの彼ならそれを喜んでくれたり目元を私と同じく照れに染めてはにかんでくれるだろうに
「とりあえず、帰ろ?」
「あ、うん…て、白雪ちゃんこの時間から俺といて家に帰れる?遅くなるでしょ?やっぱり駅まで送るっス」
「やだ」
涼太くんと話をする
そう強く目を見て言えば、私にはもう妖怪への効力を持つ声はないというのに、彼はピクリと体を揺すらせる
東京から学校終わりに神奈川の海常まですっ飛んできたというのに、なぜ満足に話もできずに帰らなければならないのか。
若干、いや結構な怒りを感じる。
そんなに私が嫌なの。
それならどうして血分なんてしたの。
涼太くんの手を引きながら大粒の雫がぼろぼろとみっともなく出てくるのがわかる
「ちょッ…、な、白雪ちゃん!?どこに向かってるのってかなんで泣いてるの!?」
「う、うう〜…だって、だって涼太くんがぁあ」
「わかった!わかったっス!俺が悪かったよね、自己中だったよねごめんね!とりあえず近くに公園あるからそこまで行こ?」
高い背を屈めて私を覗き込む蜂蜜をもっと透明にしたような黄色の瞳は美しくて、涙も一瞬止まる。
大きな手のひらが、指が、私の頬や目尻に触れて涙を拭う。
彼に、今度は逆に手を引かれる立場になりながら、たどり着いた公園にはあまり人気がなかった
「ここ裏道だからあんま人がいないんスよ。だから俺らの話しても、大丈夫」
そう言った彼は私が会いに来てからようやっと少しだけ口元に笑みを浮かべて、ベンチの隣を叩いて私の着席を促した。
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