2018/02/24 Sat
憂鬱の塵に埋もれる




冬に体調を崩すのは毎年恒例のことで、一昨年は風邪を拗らせて気管支炎になったし、去年は溶連菌感染症と胃腸炎を併発させた。今年は気管支炎と肺炎だった。熱が40度まで上がった。煙草美味しくないどころか吸えなくなるから体調崩すの本当にやめたい。抗生剤入りの点滴六回もぶち込まれて腕がヤク中のようなありさま。

健康的に冬を乗り切りたい。食欲皆無なのに懸命に食物摂取してるし、R1ヨーグルト飲んでるし、肉食べると調子悪くなるけど時々頑張って食べてるし、サプリやら健康食品やらも試した。でももうどうしようもない。あと何を試せばいいんだろう。もう疲れてきた。



仕事を辞めたい同期の佐藤は相変わらずやる気なく仕事を続けながら私に愚痴を言うんだけど、このまえなんと佐藤の直属の上司にいきなり「いま時間ある?」と言われて、夜中の十時に喫茶店で珈琲をご馳走になった。

佐藤の上司は佐藤と一緒に同じ顧客を担当している。私たちが入社した当初から「佐藤がどこでわからなくなっているのかわからん」とか言ってしまうような天才タイプで、技術も高くて知識もあるすごい人だ。だが天才だから佐藤の悩みがわからない。

佐藤は話すのがあまり得意ではない。無意識に失礼なことばを使ってしまって「無自覚に失礼」と他の先輩に言われたりする。思考がやばいというよりは、適切な語彙を知らないからそうなる。「は?何言ってんだこいつ?」と思っても、よくよく聞くとまともなことしか考えてない。

佐藤の上司はあまり他人に興味がない。佐藤が後輩としてやってくるまで何もかも一人でやってきた。佐藤がやばいことばを使ってるときも聞き直したりする優しさはない。同期でもないんだから当然のことだけど。佐藤が軽率に使ったことばに対して「え?そこからわかんないの?」とか言ったりする。打たれ強くない佐藤はもやっとする。だがもやっとすることをうまくことばにできない。佐藤の上司は、佐藤が何にもやもやしているのかわからない。

「佐藤が何に悩んでいるのかわからない」と佐藤の上司は言う。佐藤の上司も、もっと上の人から「おまえら仲良くやれよ」とか言われてもうどうしていいかわからないらしい。


他人のことばなんてわからないものだし、他人のことばは感情と完全にイコールじゃない。私はそう思うから、自分が納得できるまで本人に聞けば?って思うけど、うまく伝えられない方にも問題があるわけだし、なんか八方塞がりだなぁと思った。他人の感情にはなるべく近付こうと努力はできるけど、完全に理解はできない。「自分はこう読み取った」という段階で納得しておくことしかできないし、「きっと自分が理解できていない部分もあるんじゃないかなぁ」と思うに越したことはないと思う。

佐藤だって、そんな面倒な彼女みたいな「察してくれ」という姿勢はやめたらいいのになと思う。学生の頃に読んだ言語哲学の本には「他者コミュニケーションは、表現したことばがすべてだ」みたいなことが書いてあった。本当にその通りだと思う。自分が他人の心情を慮るのは大切だけど、それを他人に強いるのはハードル高すぎる。

などということを思いながら聞いてたけど、佐藤の上司は「佐藤はナナオと比較して落ち込んでるんだよ」みたいな、私のせいにするようなことを言っていて、もうほんと火の粉かぶりたくないからやめてくれよと思った。やってる仕事なんて顧客によって全然違うのに、比較するのやめへん?


変な火の粉の降りかかり方をされては困ると思って、私は自分の上司に報告しておいた。佐藤からは、佐藤の上司の愚痴をしこたま聞いてるけど、何も言わないでおいた。佐藤の上司と喫茶店に行ったことは、佐藤には伝えていない。

なんで私が別部署の同期と先輩の面倒見なきゃならんのか。残業代も出ないのに、私働きすぎじゃないか?だから肺炎になるんだよ。



長くなったので、コメレスはまた今度!


 


ALICE+