2019/01/09 Wed ゼミ会2 引き続きゼミ会の覚え書き _____ 2.語りと自己 『存在と時間(一)』p30 梗概 古代の存在論は、存在の意味を「臨在(パルーシア)」のうちにみとめていた。パルーシアとは「現存していること(アンヴェーゼンハイト)」、現在に在ることであり、それは、したがって、一箇の時間的な規定にほかならない。古代存在論は、他方では、ロゴスを、つまり「語ること」を人間の規定として重視する。語ること(レイゲン)は、或るものをそのものにそくして現在化することであり、そこでもまた時間の問題が登場している。 『存在と時間(一)』p32 梗概 かくて「現象学」とは、「アポファイネスタイ・タ・ファイノメナ」、つまり「じぶんを示すものを、それがじぶんをじぶん自身の側から示すとおりに、じぶん自身の側から見えるようにさせること」である。 『存在と時間(一)』p144 現存在とはそのつどじぶんの事実的な存在にあって、じぶんがすでにどのようにあったかであり、「なに」であったかである。明示的であるかどうかにかかわりなく、現存在はみずからが過ぎ去ったありかたである。しかもそれは現存在にとって、じぶんの過ぎ去ったありかたがみずからのいわば「背後」に押しよせてきて、現存在が過ぎ去ったものをなお目のまえにある属性として占有しており、その属性がときに現存在のうちではたらきかける、というだけのことではない。現存在はみずからの過ぎ去ったありかたで「あり」、その存在は、大まかにいえば、そのときどきに現存在の未来のほうから「生起する」。現存在はじぶんがそのときどきに存在する様式にあって、したがってまた現存在にぞくする存在了解についても、或る伝承された現存在解釈のほうから現存性は、さしあたり、また一定の範囲内でたえずみずからを理解しているのだ。 『存在と時間(一)』p165 現存在、つまり人間の存在は、通俗的な「定義」においても哲学的なそれにあっても、〔ことばをもつ動物〕、すなわち、その存在が本質からして、語りうることによって規定される生物として境界づけられている。〔語ること〕は、語りかけ、語りあうことにあって出会われる存在者の存在構造を獲得するさいに手引きとなるものである。 『語り切れないこと―危機と傷みの哲学』p27 わたしたちは誰しもが、わたしはこういう人間だという、じぶんで納得できるストーリーでみずからを組み立てています。精神科医のR・D・レインが言ったように、アイデンティティとは、じぶんがじぶんに語って聞かせるストーリーのことです。 ・アイデンティティ=じぶんがじぶんに語って聞かせるストーリーのこと ・わたしたちは誰しもが、わたしはこういう人間だという、じぶんで納得できるストーリーでみずからを組み立てている ・人間の規定=語ること=或るものをそのものにそくして現在化すること ・「現存在」=「人間」=〔ことばをもつ動物〕 ・そのつどじぶんの事実的な存在にあって、じぶんがすでにどのようにあったかであり、「なに」であったか、みずからが過ぎ去ったありかた 『語り切れないこと―危機と傷みの哲学』p27 わたしたちはそのつど、事実をすぐには受け入れられずにもがきながらも、たとえば腕をなくした、足をなくしたとか、子どもを亡くしたとか、じぶんはもう病人になったという事実を受け入れるために、深いダメージとしてのその事実を組み込んだじぶんについての語りを、悪戦苦闘しながら模索して、語りなおしへとなんとか着地する。 『存在と時間(一)』p29 梗概 伝統は一般にもそれが「引きわたすもの」を近づきうるものとするよりは、しばしばそれを隠蔽するからだ。伝統は、かえって、現存在の歴史性そのものを根こそぎにしてしまう場合すらあるのである。 『実存主義思想論集XXU(第二期第十四号)レヴィナスと実存思想』p190 「〔書評〕鹿島徹著『可能性としての歴史 越境する物語り理論』柿木伸之(岩波書店 2006年)」 「歴史性」は「生の可能性を物語りつつみずからに伝え、承けつぐという作用」として遂行されるのであり、この「生の遂行」が歴史そのものを成り立たせているのだ。しかもこの「動詞的」な「伝承作用」こそが「伝統」なのであり、その作用とは、「実現されたかもしれないが実際には未遂に終わった生の可能性の「取り戻し」」にほかならない。著者はこの「反復=取り戻し」を、ハイデガーをナチズムにコミットさせるその「来歴の物語り」を内在的に批判することによって、「かつて挫折し、その後の歴史の物語りにより抑圧・隠蔽されてしまった生の可能性を再発見し、救出するもの」としてとらえなおしているのである。 ・語りなおす=アイデンティティを模索すること ・伝承=実現されたかもしれないが実際には未遂に終わった生の可能性の「取り戻し」 ・語ること/語りなおすこと=脚色や隠蔽を避けられない ・語ること/語りなおすこと=脚色や隠蔽等によって失われた意味を取り戻す作用も持つ |