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シャルナークに一目会ったその日、興奮していたのか寝つきが悪かった。だってあのサラサラの金髪、綺麗な翠色の眼…!整った顔つきに中性寄りの低音ボイス!!ただでさえイケメンだと思っていたのにガチもんに出くわした私って運あるんじゃないか!?

なんて考えても見るけどはて、と冷静になって見る。

あの場に団長、ってシャルが言ったけど一応クロロがいたってことだよね。しかも聞いたところによるとリキさんと会ってたみたいだし、て言うかクロロだったんなら間近で見たかったわ。いやそりゃあシャルナークだって間近で見れましたよ?マジマジ。けどさぁ、怖いもの見たさって言うやつ?興味本位なんだけどもう少し近くで見たかったなぁ…なんて。


「…いかんいかん。変なこと考えるんじゃなかった」


いくらあの好きな世界と言えど確率の低いあの場で出会えたことは奇跡に近い。もしかしたらもう会うこともないのかもしれない。
私がHUNTER×HUNTERの知識で知っている限り(少なくとも)シャルナークはヨークシンシティでの蜘蛛のシャルナークの面影だったから、おそらくその年代に今いるのかもしれない。多分。


「年代なんて聞かれてもそこまで詳しく把握してないしわかるわけないよね」


そこはまあ、仕方ないと妥協するしかないといいますか。知っていたとしてもだ、今の私に何ができる?実際問題ハードでドライな修行(しかも基礎の基礎)を課せられてる私に何もできるはずがない。むしろ即死さえ考えられてしまう。蜘蛛に近づくことさえできるはずがない。



「…いい思い出にしよう」


私に話しかけてきてくれてありがとうシャルナーク。妄想とかで多少美化してるかもしれないけどあんなに優しく話しかけてきてくれて本当に嬉しかった。何も知らなかったら、本当にただの才色兼備ですよね。ただのイケメン。

明日も朝が早い。寝坊したら鬼に頭ぐりぐりされる。寝よう。








「朝飯はどうしたコラ!」

「痛い痛い頭ぐりぐりはやめて!リキさんごめん!」



寝坊しました。いつもと変わらない様子で何食わぬ顔で仕方なく加えたトースト右手に、新聞左手なリキさんにため息をついた。あーあーごめんね。少しくらいイケメンについて考えてもいいじゃないの。つっても、もう会うこともないだろうけどさ。


「飯くわねぇのか?」

「食べます食べます頂きます。目玉焼きベーコン乗せいる人」


「「はい」」




…?

おや、違和感。私がエプロンしてリキさんに背中を向けているとは言え2人分の返答が聞こえたなんて。マジで不思議に思った3秒後。

焦って振り返るとリビングの楕円のテーブルに座ってトーストをもぐもぐしている隣に灰色の髪の二つ結びの少女が、それこそ何食わぬ顔で朝食を待っているように足をぶらんぶらんとぶらつかせていた。


つーかいついた!?誰!???リキさん突っ込みなしか!侵入者ですよ!!てか少女!!



「ど、どちらさまですか…!?」

「リキの悪友かつビジネスパートナーだ」

「えっ!?」

「まあ間違えじゃねぇな」

「案ずるな、ただの医者だ」

「ヤブ医者なハンターの間違いだろ」

「ヤブなハンターに言われたくない」


どちらも引かぬ様子で(しかも少女は無表情に近い)医者?ってこんな小さな子が医者なんて…と思いながら少女が見上げてきた。紫色のとても綺麗な瞳だなあと余裕があったのか思ってしまった。


「リリーだ。お前のことは聞いている」

「あ、どうも…聞いてるって?」

「俺暫くここ空けるから代わりにこいつに稽古つけてもらえ。つか早く飯」


ああ…、と思いながら支度した。いきなりの発言に起きたばかりの脳を精一杯動かそうとした。つまりいえばリリー、さん?と2人で修行すると?
ん?お医者さん…だよね?でもリキさん今ハンターって言わなかった?こんないたいけそうな少女がそんな危険なライセンスなんて持って


「こんな形(ナリ)でもこいつババアだかんな」

「貴様みたいな化け物に言われたくない」

「それはお互い様だろ。歳を考えろってーの」


またも無表情で口論(?)に発展しそうだったので慌てて間に入る。


「え?リキさんどこかにお出かけですか?」

「今年のハンター試験の試験管しろってネテロのジジイが五月蝿えんだよ」

「え、ね、ネテロ会長!?」

「いい子で留守番してろよ。あとなんか焦げた匂いするんだけど」


「あ、…ああああ!!!」

「五月蝿えけど鍛えてやってくれ」

「…」



目玉焼きの白と黄色が真っ黒になってしまいましたとさ☆





「あ、おい」

「なんですか?」

「…いや、なんでもねぇ」

「?」


すこし、と言うかかなり歯切れの悪そうな感じで切り上げてリキさんは身の回りの荷物をまとめ始めた。えっ今から立つんですかあんた。


「もしかして私が出るハンター試験も出てくれるんですか?」

「んなわけねーだろ。念から程遠いお前みたいなやつ、俺だったら一発で失格にするな」


むぐ、と口をつぐむ。まあそりゃそうなんだけどさ、すこしくらい期待しても良くないか!?それにしても相変わらず厳しいよねこの人は。
私の心を知ったか知らずか、リキさんはカバンをヒョイと肩にかけるとこちらを見た。


「知らない人に声をかけてもついていくんじゃねぇぞ」

「は?何ですかソレ。子供の時散々言われましたけど」

「子供だろ」

「あのですね、見た感じ子供でしょうが元いた世界じゃ私結構グラマーでセクシーな女だったんですからね!」


もちろん嘘である。しかしここまで言われて何も言い返さないのもおかしい。極めて滑稽、というかけちょんけちょんにされまくりである。何も言い返さないことをいいことにこの人は言いたい放題だ。甘やかしちゃいかん。何を甘やかせているのか未だによくわからないけどさ。


「嘘つくな。目、泳いでんぞ」

「ふぁ!?」

「そういうことだから、いくらお前が誰かを知っていようとも向こうが仮にお前に興味を持った誰かが近づいてきたとしてもついて行くなよ」

「…それってどういう…」

「そのまんまだ。返事は?」

「は、はい」


珍しく(?)語尾を強めて有無を言わさぬ瞳で見てきた師匠に思わず肩を上げて背筋を伸ばした。




「リリーさん、よろしくお願いします」

「ああ。リキにはとにかく基礎体力の基盤を基にと言われた。診療時間は相手はできないが様子を見にくるようにはする」

「(診療…ってマジで医者なのか…すごいなあ)すいませんね、私なんかのために何か…」

「いや、リキに聞いてすこし興味が湧いてな。私もできるとこまで見届けよう」



この人(さっきまでこの子とか思ってすいませんでした)めちゃんこいい人じゃん!
たとえ興味本位だとしても、私のことを思って修行をつけてくれるのだから。
…でもビスケット=クルーガー並の様子をお持ちということはかなりのマッチョ系…いやいや!ちょい待て、何考えとるんだ私は!失礼にもほどがあるだろ!でも考えちゃうよねここHUNTER×HUNTERの世界だもんね!

…あれ?

なんだかんだ言って、私原作に登場しないような方達と交流してますよね?

それはいいにしても、リキさんがあの旅団の団長と話す中だもんなぁ…。

けどまあ世間は広いのか狭いのか、ここに来てよかったのかな?と。私がいたことによって何も変わらなーーー


ーーあれ?

シャルって原作でどうなるんだっけ?


「はい、これでしょ?」

「ーーー」


不意にシャルと出会った瞬間を思い出した。
原作の最新刊がどんな内容だったとか思い出せずに出会い頭を思い出すなんて、きっと私の中で何かの思い過ごしだ。そうだ。