09

来る日も来る日も修練場での練習は続いた。

勿論、その1週間ずーっと守君とは一緒にはいれなかったからモヤモヤが溜まる。


試合前日は雨。守君たちは修練場から這い出てきた、死にそうな顔をした皆に傘を渡していく。



「身体冷やして 風邪引くなよ!」

「守君 入って」



傘を差し出すと「サンキュー 〇」と嬉しそうに笑った守君が入ってきた、相合傘の感動に浸るにはギャラリーが多いけど...。


守君の荒い息遣いと、傘に落ちる雨の音が変に心地良くてその中にどきどきと胸の音も重なって 酷くご機嫌になった私は守君の腕を掴んだ。



「私 守君の荷物持ってきてるから、このまま帰ろうよ...早くお風呂入らなきゃ...!」

「え!本当か?重かっただろ ごめんな、ありがとう〇!」



私の肩にかけられている荷物を守君は奪うようにして取る、肩いたかったろって心配してくれるその声が 6日ぶりの守君って感じできゅーっと心臓が甘く痛んだ。



「お疲れ様ぁみんなー」

「また明日な!お前達もしっかり風呂に入って暖まれよ!」



部室の前には制服に着替えたマネージャーや部員達が多く残っていたが絡めた腕を離さずに堂々と歩けば、その姿を彼女達は丸い目をもっと丸くして食い入るように見てきてなんだか笑える。



「傘、俺持つよ」

「いいよー私が持ってる」

「お前濡れてるじゃないか!俺が持つ」



こんな会話聞いて、後ろで木野さんと雷門さん顔真っ赤だろなぁ。振り向いて 情けない程赤くなってる顔を見てやりたかったけど、今日は早く二人っきりの世界になりたかったから 足早に校門を抜けた。










〇は優しい、いつも 俺の後ろをついて回って気遣ってくれる。サッカー部に入ったばかりなのにみんなに馴染んで、しっかりと仕事をしてくれるし頼もしい仲間だ!



「守君、明日の試合の後 お話があるんだけど...」



しとしと。

降り続ける雨の音に、〇の可愛らしい声が混じる。



「話?今じゃダメなのか?」

「ダメ!絶対明日、二人っきりでね」

「おう、分かったぜ!...そうだ、明日の試合頑張らなきゃな」

「明日も私応援頑張るから、試合の後私と会うって約束絶対忘れないでよね...!それじゃ また明日」



この傘あげる!

薄らと黄色の水玉模様が描かれてる傘を指さして、自分のマンションの中に入って行った〇。

ばたばたと子犬みたいに元気よくマンションに駆けて行った〇を見てると、なんだか 心臓がぎゅっと痛くなった。

...ん?今のなんだ?



「俺、胸ぶつけたかな...?」



変なの、なんか中の方が痛い気が...?



「もしかして病気...!?...ってそんなわけねーか」



腹減って死にそうだから、いつもよりも早歩きで家に向かった。









今日は待ちに待った告白する日。

またまた、早く起きて鞄の中に 試合後お化粧直しをする為の道具やヘアブラシなんかを詰め込んでいく。

今日はハムサンドを作った、私の大本命は守君だけど...ほかの男の子達にもちやほやされたいじゃない?唇に薄い色のグロスを塗って、玄関のドアを開けた。



「...風丸君?」

「お、〇じゃないか!おはよう」

「おはようっ、すごい偶然ー 今日はねハムサンド作ったんだよ?」



朝からさいこーにカッコイイ風丸君の顔見れて頬が緩んでしまう、ハムサンドの入った袋を見せれば 「早く食いたいな」 なんて優しく笑ってくれた。

もしフラれちゃったら風丸君にしよう、なんて 綺麗な横顔を見て私はにやっと笑った。










控え室の小さなテーブルに 朝頑張って作ってきたハムサンドをのせて「食べてね!」と言えば皆が一斉に手を伸ばす、美味しいという声に満足した私は リップを塗り直しにお手洗いに行く事にした。



「俺も行く!」

「守君、一緒に行こー」



無機質な控え室から出たというのに、廊下も寒っ苦しい感じで 嫌になるなぁこの学校。パタンと守君がドアを閉めたと同時に 角から この学校のゴールキーパーが現れた。



「君か」

「この前はやられちまったけど、今日は絶対負けないからな!」



感じの悪い男の子だなぁ、きっとモテないに違いない。睨み合った二人がすれ違う私は守君の後ろを追いかけて新品のローファーを鳴らした。



「守君、頑張ってね」

「おう!ありがとな!」

「守君 試合終わり覚えてるよね??」

「...え?あっ、ああ!覚えてる覚えてるってー!」


「もお、忘れてたでしょ!!」



唇を尖らせれば守君は両手を合わせてごめんのポーズ、それが可愛かったので許してあげた。









「えー!?ドクターストップ!?」



勝利したのは雷門だったのに、豪炎寺君の怪我のせいで 部室に足止め...。確かにすっごい高さから落っこちたから あんなのはケガするよねーって感じだったけど。

これじゃいつまで経っても守君に告白ができないじゃん...。



「すまん...次の準決勝には 出場出来ない」

「そんなー!?」


「すまん......」



申し訳なさそうな顔で松葉杖に体を預ける豪炎寺君、守君は膝からかくんと崩れ落ちて頭を抱えてる。



「みんなぁ、豪炎寺君責めちゃダメだよ!」

「〇...」

「ねっ?ほら、豪炎寺君もお家に帰ってゆっくり休んだ方がいいよ」



自分の株をあげつつ、邪魔者達を追っ払う...我ながら私って本当に悪知恵が働くと自画自賛。



「ほらほらっ みんな今日は疲れたでしょ?帰ろっ」

「〇さん 優しいっスー!」



壁山君の声に みんなが私を褒める声が続く、気持ちいいこの感じ...だから私は 嘘を吐くのがうまくなる。



「じゃあ、守君っ 私校門で待ってるから...!」



守君の腕に軽く触れて私は部室をあとにした。










「キャプテン〇先輩と仲いいっスよね!」

「というか、〇が円堂の事好きって感じ」

「え!?アイツが俺を...?いやいや、無い無い」



〇が去っていったドアを見た、あいつが俺の事好きなんて絶対ないよな...!だって俺が女だったら豪炎寺とか風丸にいくし...なんて馬鹿みたいな事を考えてしまった。

そういえば、二人っきりで話ってなんだ...?



「...円堂、〇には気をつけた方がいいぜ」

「染岡?」

「俺もそう思う」

「豪炎寺まで...どうしたんだよ、お前達?」

「いや、なんか上手く説明出来ないんだが..なあ豪炎寺?」

「ああ」


「...お前達、あんなに頑張ってくれてるマネージャーを悪く言うもんじゃない!」



染岡と豪炎寺は 俺の言葉に面食らった顔して、困り顔を見せたと思えば「すまない」と笑った。


着替え終わって、俺は〇の待つ校門まで少しだけ早足で向かう。今日の試合...楽しかったなぁ、杉森達が 最後あんなイイ顔でボール蹴ってくれて 自分達のサッカーを出来て やっぱりサッカーって楽しいぜ!

なんてことを考えながら空を見ながら歩けば、「守君っ!おそいー!」と 風に髪を揺らしながら俺に手を振る〇の姿が。



「悪い悪い!お待たせ!」

「仕方ないなぁ...ほら、行こ?」





20180508