08

御影専農の二人が去っていく背中を見つめた後、意気消沈してしまった俺達は気を取り直して必殺技の練習はせずに基礎トレを一通りこなしオレンジに染まる河川敷を後にした。

帰り道が一緒の俺と〇は薄暗い帰り道を二人で並んで歩く。



「〇、なんか飲むか?」

「えっ いいの?」

「ああ!この前めっちゃウマいたまごサンド作ってくれたしな、そのお返しだ」



パーっと小さくて可愛い花みたいに笑う〇、うーんうーんと悩んでから彼女は冷たいココアのボタンを押した。



「お前っぽいな」

「どういう意味よ!」

「え!いや、その...可愛いの飲むなぁってさ...へへ」



俺ってば何言ってんだ...!

恥ずかしくなって彼女の顔を見ないようにして、炭酸ジュースのボタンをぽちっと押す。ガコンと音が鳴り落ちてきた紫のラベルがはられたペットボトルを手に取り〇の方に目をやれば、風邪ひいたみたいに真っ赤な顔した〇の姿が。



「なんで、そんな顔赤いんだ...?」

「守君って...本当に鈍感...!」



唇をつんと突き出して怒った顔をした後、「ほら 行こ?」といつもみたいな笑顔で俺の腕を引っ張る〇。



「ねえ、守君質問してもイイ?」

「なんだよ 急に」

「守くんの好きな女の子ってどんなこ?」

「え...?好きな女の子...?」

「タイプとかあるじゃん目がおっきいとか優しいとか!」

「うーん...タイプ...?俺そういうのあんまり分かんねぇんだよな、」



初恋というものを風丸や半田はもう経験していると聞いたことはあるけど、なんだか自分にはピンとこなくて首をかしげた。

うーん 好きな女の子か...

考えても考えても、明日の練習だったりフットボールフロンティアのことばっかりが出てきて。



「俺やっぱ、分かんないかも」

「もぉ男の子なのに!」

「そうだな...あっでも!ニコニコしてる女の子見てると元気が出るぜ、〇みたいな!」



紫の炭酸を口中に流して飲み込んだら心地よく喉が焼けた、ふと 横にいる〇を見ると 満足そうに笑ってた。



「なんで笑ってるんだ?」

「ココア美味しくて、幸せだなって」



ふふふ 俺の肩に少しだけ頭をコツンとあてて、〇は楽しそうに笑ってココアを飲んだ。



「お前ー近いって」

「え?そうー 気にしすぎだよ 守君っ」











コケまみれのドーム型の建物。

その前でいきなり目金君が長々と怖い話をするものだから皆震え上がっていると、少しだけ鈍い音がして開かれたドアから現れたのは...雷門さんだった。

下にグーンと伸びた階段を降りていくとまるで海外アニメで見た子供たちが作る大げさな秘密基地のようだった、やけに静かなそこでは些細な物音もよく響く。



「さあ 入って?ここは、伝説のイナズマイレブンが使っていた修練場...イナビカリ修練場よ」



驚きの声が高い天井によく響く。

理事長の娘だからって金に物言わせて こんな風に気を引くなんてズルい。守君の横に立つ彼女はスラリと背が高くてスタイルも良くてお金持ってるし、まあ 顔も悪くない。

完璧に近い女の子。



「ほら、男の子以外は外に出るわよ」

「え?私はここに...」

「ここに居たら邪魔になるだけよ、それとも貴女邪魔をしたいの?」



ツンと私を見る鋭い猫のような目は、悪意に満ちたものに感じた。そんな私達から木野さんと音無さんは目を逸らしてそそくさと外に出る、なんでこんなに 冷たくされなきゃダメなの?雷門さんに「邪魔したいわけないじゃない、外出ればいいんでしょ?」と吐き捨てる様に言って外に出る事にした。そもそもこんなホコリ臭いところ私だってゴメンだ。



「みんな頑張ってね!」

「おう!〇、ありがとな!」



閉まっていく扉の向こうに見えたオレンジ色にまた恋をしてしまう、私の名前だけを呼んで 練習に向かう守君にさっきの雷門さんの言葉は忘れることにした。



「さて、ロックが解除されるまで待ってましょう」





20180412