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「秋葉名戸学園ってどんなところなの?」



雷門さんの声に現実に戻ってしまった。

昨日あんなに夢見心地な気分で、手を繋いで家に帰って 最高に気持ちイイ朝を迎えることが出来たというのに...今日も今日とでサッカー部の雑用...。



「学力優秀だけど少々マニアックな生徒が集まった学校...フットボールフロンティア出場校中最も最弱の呼び声が高いチーム......っな!なにこれ!?」

「どうしたー?」



椅子の背もたれに腕を組み顎を乗せる守君、その横にピッタリと体をくっつけて座れば 一瞬みんなの視線が私に集まった。



「尾刈斗中との試合前もメイド喫茶に入り浸っていた......ですって!」



赤い顔のまま 手帳から顔を離す木野さんに対して「メ、メイド喫茶ですと...!?」と嬉しそうな声をあげた目金君..。

それぞれが 続けて会話をする中、部室のドアの向こうから音無さんの「大変です!」と焦った大きな声が。



「どうした!?」


「今、準々決勝の結果がネットにアップされたんですけど...!」











「これは行ってみるしかないようですね,メイド喫茶に...秋葉名戸学園とやらがあの強豪尾刈斗中を敗ったのにはなにか理由があるはず 僕にはその理由がメイド喫茶にあるとみました...行きましょう円堂くん!」



グッと熱く拳を握って、目金はキラキラした目で俺を見る。



「情報収集なのですよ!」

「な、なるほど...行ってみようぜ!」



確かに何も知らないチームと戦うんだ、情報収集は大事だ!どよーんと沈んでいる皆を無理矢理立たせる目金に合わせて立ち上がり 俺達は制服に着替えた。


部室を出れば 大きく頬を膨らませた◎が俺の目の前に...。お、怒ってる?



「ねえ、守君...メイド喫茶なんてさ目金君だけ行かせたらいいじゃん」

「いやでも 情報収集に行かないといけないからさ」

「浮気と一緒だよそんなの!私も行くから!」

「いや...マネージャーにはやってもらいたい仕事が...」

「ねえ 守君...私だけじゃダメなの?」



スカートの裾をきゅっと握って◎は俺を上目遣いで見る、こういう時女の子になんて言えばいいんだ......豪炎寺...風丸...助けてくれ...!なんて考えていたら 夏未が俺達の元に。



「早く行ってらっしゃいよ」

「...雷門さんは関係無いでしょ」

「公私混同するのはやめて頂戴 フットボールフロンティア出場校中最も最弱と呼ばれていた秋葉名戸学園が 強豪である尾刈斗中に勝ったのよ この意味がお分かりかしら?こちらのリサーチ不足によって負けてしまったら笑いものよ そんなの私は許せないわ」



ギロリと猫のような鋭い目をして雷門さんは私に向ける、長ったらしい説教を垂れている間に着替え終わった目金君達が守君を掴まえて部室前から離れていってしまった...。



「ちょっと、守君とまだ話終わってなかったのに」

「あら?話す事なんてあるのかしら?」

「あのね 私と守君は昨日付き合ったの、彼女として嫌なことは嫌って言って何が悪いわけ?」


「...付き合ったの?」



鋭い猫の目を見せたと思えば、目をまん丸く揺らして雷門さんは 少しだけ動揺した。木野さんも雷門さんもざまあみろって感じ。

私は彼女の真横を通り過ぎて部室に入った、あんな女に構ってる暇ない。もし、メイド喫茶を気に入ってしまったらどうしよう...私よりも可愛い子がいて その子を好きになったらどうしよう...

考えれば考える程悪い事ばかりポンポンと出てくる、私は携帯を取り出して頼まれた仕事そっちのけで電話をかけた。


1件 5件 15件 全然とってくれないし、送ったメッセージの既読もつかない。絶対変だ...私はいてもたってもいられなくなって 荷物を掴んで部室を飛び出した、絶対浮気するつもりだ!守君!



「...!?〇さん、仕事がまだ...」

「うるさい!」



ギャンっと吠えれば 音無さんと木野さんのぎょっとした顔、私の代わりに仕事でもしとけばいいでしょ...

小走りで 校門を抜けて 私は商店街へと向かった。




20180601