パステルカラーの紫と水色のヘアゴムで今日はポニーテールにした、首を左右に軽く倒すと綺麗に巻けた柔らかな毛先がサラサラと揺れる。
鏡に映る私 桃色の唇から前歯をのぞかせて笑っていて、久しぶりに本気で恋しちゃったんだ 目を閉じても目を開けても昨日の守君の優しい笑顔と大きな手のひらが引っ付いて離れない。
「よーし、今日も可愛い!」
行って来まーす!元気よく挨拶をしてガチャンと鍵を閉めた、スカートのポケットに入れた キーホルダーまみれの鍵が私の太ももを刺すがそんなの気にならない。
イヤホンから流れるラブソングは私の気持ちを隅々まで代弁してて、耳から伸びるピンクの線をくるくると指で弄ってピンっとピンクの丸を耳の穴から外した。
インパクトのある稲妻マークがもう目の前に、校舎へと足を踏み入れると下駄箱には沢山の生徒。
ちょっと遅すぎたかな...?
「おはよう〇さん!」
緑のリボン、ピンクのピン、爽やかな香り...同じ2年のマネージャー 木野さんは今日も優しい雰囲気で眩しかった。
「円堂君から聞いたわ 昨日大変だったのね」
「うん、でも守君が優しくしてくれたから 大丈夫」
「円堂君は誰にでも優しいから」
ニコッと 笑ってはいるけど、その目...嫉妬した時の目だよね。私知ってるよ 木野さんはマネージャーとして守られてきたかもしれないけど、もう私が入ったからには 貴女の場所は私のものになる。
「...それじゃ、放課後木野さん色々教えてね??」
「ええ 宜しくね!」
ピンクの髪留めに少し触れて乱れていないのに前髪を整えうわばきにはき替えた彼女は教室へ向かっていった、何ともないって顔しといても内心は私が面白くないのかな。
先がピンクのうわばきに足をいれて、私はパタンと下駄箱を閉じた。
「おはよう」
「あ、風丸君ー!おはよう!」
「〇...円堂に聞いたけど 大丈夫か?酷いことする奴らがいるんだな」
「風丸君...実はサッカー部のマネージャーになった事を快く思ってない先輩達に呼び出されて、サッカー部のマネージャーやめた方がいいのかなぁ?」
初めて聞く音に小首を傾げる子犬のように私は上目使いで風丸君を見た、彼は綺麗な瞳を大きく見開き 私に顔を近づけて来た。
「...そいつら、誰か分かるか?」
「えっと 3年生の先輩で、名前とかは分からないけど...可愛い人達だった気がする、」
「...なんとなくだけど多分あの上級生だな、俺から話しとくよ ごめんな巻き込んで もしまたなんかあったらサッカー部の仲間みんなで守るよ」
「え、そんな いいの? 私が悪いのに...」
申し訳なさそうにすると どう考えてもそいつ等が悪いよ!と真剣な顔を見せる風丸君。守君と昨日あんな事が無ければ多分 風丸君と来週あたり付き合ってたかも...!なんて、私は今守君で埋め尽くされてるから 風丸君は私を守ってくれる騎士って感じかな。
あの先輩達が何言っても私の事をみんなが守ってくれる、喧嘩を売ったのは私だって絶対分からないもんね。
「ありがとう、風丸君...!先輩達が好きになるのも仕方ないよ...!」
「え?」
「風丸君は とっても優しいもん!」
ほんのりと赤くなったと思えば彼はまるで林檎のように色づいていった、ふふ 可愛い。ほら!教室行こ?と私が言うと 風丸君は ああ と短く返事をして うわばきにはき替えた。
もうすぐ、ホームルームが始まるので、周りの生徒達もバタバタとそれぞれの教室へ向かっていた。
▽
「みんなー!分かってるなぁ とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ!」
キーーンと大きな声の守君。
はりきっちゃって 可愛いなぁ、全然詳しくないけど 大事な試合が始まるみたいだ。ワクワクと楽しそうな顔をする部員達。
「で、相手は誰なんだ?」
「相手は......知らない!」
ガックンと皆の首が落ちた、えへへとバツの悪そうな顔をする守君。私は部室の隅っこで そんな守君のコロコロと変わる表情を見ていた。
そんな時ガラッと部室の扉が開き、そこから顔を見せたのは 青白い顔に無精髭を生やした眼鏡の先生だった。
「野生中ですよ、野生中は確か...」
「昨年の地区予選の決勝で帝国と戦っています!」
ちんぷんかんぷんで つまらなくなってきたので、グルリと部室を見回した。汗くさくて泥臭くて 私の居場所って感じではないけど...まあ これも守君と付き合うまで...!我慢しなきゃ。
「...あ、それから」
「チーッス!俺 土門飛鳥、一応ディフェンス希望ね!」
先生の後ろから 元気よく顔を覗かせた、細身の彼は良く焼けた肌が印象的な 典型的なチャラ男...って感じで キョトンとする私にウィンクしてきた。
20180329