校門で曲を聴いて守君を待つ。
恋愛中ってどんな曲でも沁みちゃうのはなんで?ただダーリンダーリンと連呼している曲だって未来を想像して心が跳ねてしまう、次の曲は鈍感な彼に怒ってるけど やっぱ好き!って感じの歌。
ピンクの線を伝って 私の耳の奥から脳にそして心臓に 切なかったり楽しかったりする恋の世界が広がって刺さっていく。あんな鈍感な男の子好きになっちゃう私って...!でも いいの、絶対私の事好きになると思うし。
風に揺れる私のポニーテール、グラウンドの方へ吹く風がこそばゆくて私も風と同じ方向を向いた。
「〇ー お待たせ!」
「......なんで、木野さんもいるの?」
次の曲に切り替わったイントロで失恋ソングだと気が付いた私は急いでイヤホンを耳からぽんっと外して、守君と気まずそうな木野さんをじろりと見た。
「ごめんごめん、遅くなって!」
「いーよ」
「木野も家近いからさ!3人で帰ろうぜ!」
「......そうだね、木野さんとは 仲良くしたいし」
顎を少しあげて木野さんを見たら、彼女は前髪に触れて私から目を逸らした。なにそれ。その反応ってさ、私が守君の事好きだって分かってて邪魔してるから怖いんだよね。
「ねぇ、守君 帰ろ」 とわざとらしい笑顔を見せながら言えば、ああ!と楽しそうに笑う彼。
「木野さんも、ほら 帰ろうよ?」
「あっ...う、ん」
「おーい!秋ー!!」
3人で帰りたくない思いが伝わったのか、校門からすぐの所で 土門君の声が聞こえてきた。揃って振り向けば学ラン姿に着替えた土門君が嬉しそうに木野さんの前まで走ってくる。
「お二人さん ごめん、秋借りるぜ?」
「えっ...?」
「ふふ、なーんだ やっぱりそうなんじゃん...!木野さんったら恥ずかしがらないで...えいっ」
ドーンと力を込めて、木野さんの背中を押して土門君の細い体に飛ばした。細いのにびくりともせず木野さんを受け止める 土門君。
「私達は二人で帰るから また明日!土門君、木野さん...」
ほらほら、行こう?
守君の二の腕を掴んで家の方面へと向かう。少しだけきになって後ろの2人を見てみたら、眉間に皺を寄せた土門君とその横で悲しそうな顔をする木野さん。
邪魔するから こうなるの。
「...なぁ!おい!〇!」
「どうしたの?守君??」
「お前 木野の事本気で飛ばしただろ...?」
「え?...そんなこと、」
立ち止まる守君、私も1歩先で立ち止まった。なんで そんなに怒ってるの...?
「あんな事して、怪我でもしたらどうするんだ?」
「...私、木野さんのためを思って」
「木野のため?」
「そうだよ あの二人昔付き合ってたんだって...!だけど、木野さん照れちゃって...私 そんな木野さんの背中をほら...押してあげたの...!」
物理的にだけど。
嘘を吐いたけど、守君はちょっと馬鹿だから騙されてくれたみたいだ。みるみる内に 目が真ん丸になっていく。
「...え?あの二人、そんな...付き合ってたのか??」
「そうみたい、だよ?」
「...事情は分かったけど、〇 あんまり乱暴は良くないぞ?分かったか?」
「うん、今度からはもっと 優しく押す...!」
「そういう意味じゃないって...」
呆れた笑いを浮かべる守君。
なんでそんなに心配するんだろ。
「ねえ、守君...もしかして 木野さんのこと好きなの?」
「へ!?! いや...っ!ないって!!」
タランと垂れている前髪が凄い勢いで上を向いた、動揺してるのか首をぐるんっと回したのだ。
「怪しいなぁ」
「いや、ほら 木野は大事なマネージャーだからさ!怪我されたら困るし...!」
「ふーん 本当??」
本当だって! こういう話に慣れてないのか真っ赤にした顔を隠す様にぷいっと前を向いて、ほら!帰るぞ!後ろを向いたまま私の腕を引っ張った。
「守君、私は 大事なマネージャー?」
「え?...そうだな、雷門サッカー部に入った時点で お前は大事なマネージャーだし仲間だよ!」
まだ 赤みの残る頬がにんまりと歪んだ、大事なマネージャーか。私は大事なお姫様になりたいんだけど、ちょっとだけ彼にちょっかいをかけてみようかな...?
家に着いたので立ち止まれば守君もぴたりと歩みを止める。
「守君、私の家ここなんだ!」
「おう また明日な!」
「ねえ 私、また守君と二人っきりで お話したいな?」
ぎゅっと 学ランの袖を掴んだら、守君はきょとんとして そしていつもみたいに笑った。
「また、明日 話そうぜ!それじゃ!」
「え...!え、あ うん...それじゃあ」
なかなか手強いなぁ 守君。
腹減ったー!と走って住宅街の方へダッシュする守君の背中は、恋とは程遠いシルエットだ。
20180329