無意識に指を曲げたり伸ばしたりしているのを土門君に掴まれてやめさせられた、もうすっかり暗くなってきた空がひんやりと私達を冷やしていく。
〇さんのあの目...
出会った時から何だか変わった子だなとは思っていたけど、まるで私を軽蔑してるような冷たい視線に秒針のように尖った言葉の数々。彼女を見ていてすぐに分かった...円堂君が好きなんだ。
「秋、大丈夫か?」
「えっ、ええ...大丈夫よ」
「◎ちゃんだっけ?怖い目してたけど...秋なんかしたのか?」
なわけねーか!と咳払いをして私の肩に手を置く土門君、優しいその熱に少し 気持ちが楽になった。
「私 〇さんに何か悪いことしちゃったのかも、」
「スゲー勢いで飛ばされたもんな...秋大丈夫だったか?」
「えぇ 私はなんともないわ、土門君巻き込んでしまってごめんなさいね」
「いいってこと...! 久々だしさ 話しながら帰ろうぜ?」
土門君のすらっとした足が伸びてコンクリートを踏み前へと身体を動かした、明日〇さんとお話してみようかな。話せばきっと分かってくれるわよね...?
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ふわぁあと長い欠伸が出た。
今日は河川敷、皆 張り切ってるのか おちゃらけてるのか分からないけど楽しそうに練習している。今日は音無さんもジャージに着替えてる、私と被るから 短パン穿くのやめて欲しいんだけどなぁ。
気を取り直してピンクのジャージを萌え袖に 目が合う子達皆に手を振って「がんばってー!」なんて甘い声を出せば嬉しそうに笑う皆。
守君と豪炎寺君とは全然目が会わないから残念...。
「...野生中との試合までに新必殺技できるのかしら?」
「...はぁ」
音無さんと木野さんから少し離れた所で会話を聞く、そろそろスポーツドリンクを渡す時間みたいで木野さん達はベンチに座る私のそばに来た。
「ドリンク作る感じ?」
「え、ええ...」
「...もしかして、昨日の事怒ってる?木野さん」
「昨日のこと??何かあったんですか?」
音無さんに顔をのぞき込まれて 引き攣らせた頬、案外 ビビリなんだね。
「昨日ね 土門君と二人きりになりたそうだったから背中を押してあげたんだけど...強く押しちゃったみたいで...ごめんね?木野さん、」
「い、いいのよ...」
「え!?土門さんと2人きりに?それってそれって 恋って事ですか!?」
「ちがっ「もぉ、音無さんったらぁ やめてあげなよ」...〇さん」
眉をひそめて指を曲げたり伸ばしたりつねったり引っ張ったりする木野さん、私がドリンクの容器に手を伸ばすと音無さんが嬉しそうに粉末を取り出した。
木野さんは そんな私の顔をじっと見つめて何か言いたそうだったけど、片眉をあげて 意地悪く笑ってやった。ドリンクを作り終わり休憩しているみんなの所に持っていく もちろん私は3人分だけ。
豪炎寺君と風丸君と守君の分。
一番乗りして 豪炎寺君、風丸君、そして 最後...守君に手渡した。
「お疲れ様ぁ 頑張ってたね」
「おう、〇 ありがとな!」
「...ねえねえ、今日も一緒に帰れる??」
周りが円堂君のバンダナと同じオレンジ色に染まってく中、ドキドキと 高鳴る胸を軽く抑えて 聞いてみた。
「ごめん!今日風丸と豪炎寺と話があってさ、着いてくるか??」
「...うーん」
そのメンバーは魅力的だけど、二人きりでお喋りしたいから今日は我慢しよう。
「じゃあ、今日は遠慮するね」
「そっか、分かった!」
「その代わりにさ 明日はお願いね?」
飲み切った容器を受け取り、私はにこりと笑みベンチに戻った。
明日が楽しみ。
▽
...見事に裏切られた。
次の日も守君は私の事をほったらかしで練習、タイヤの穴に身体をはめ 壁山君とよくわからない特訓を始めた。
つまんないの...
いつ帰るつもりなんだろうかすっかり暗くなった鉄塔広場、木野さんと守君 二人の距離はあまりにも近くて嫉妬は渦黒く私のつま先から頭までを順番に染めていく。
帰ってシャワー浴びたいし、なんか ムンムンに汗臭いこの空間にいるのが嫌。
「ねえ、私帰る」
「え?まだ練習は...」
「ごめんねぇ 皆、遅すぎるから...親に怒られちゃうかもー」
木野さんの大きな瞳が 「嘘でしょ」 とでも言いたげに揺れてる、暇なんだもん。仕方ないじゃん。男の子達には手を合わせて本当にごめんねぇ!と甘い声を出すと 気を付けろよ と私を心配する声が返ってきた。ぐるんっと スカートを翻して、私はいつも通りのピンクのイヤホンで 恋の歌を聴きながら帰った。
でも帰り道 ちらりと見えた木野さんと守君はさっきよりもっと近くにいて、ムカムカと胃が暴れ出した。
20180401