06

試合当日。

私は早めに起きてみんなの分のサンドイッチを作ることに、固めに茹でた卵とマヨネーズと塩胡椒を白いボールの中でグチャグチャと音を立てながら混ぜていく。
こんな事しないと男の子達のハートを掴めないなんて、あぁ女の子って大変だなあ。

モテるためにある人生だから私は絶対にモテてモテて、どうしようもないくらいモテて 最高の王子様を手に入れたい。

ふんわりとした食パンにバターを塗って、出来たての卵サラダを厚めに寝かせる様にのせた。



「あっ そろそろ出ないと」



どったんばったんと音を立てて マンションから飛び出した、うんと天気のいい今日は私の女子力の見せ所だから...絶対木野さんには負けない。


次の日も、ずっと守君の横にべったりくっついて離れなかったあの子にたまんなく腹が立ったからまた練習に参加せずに帰っちゃったし...!今日こそは絶対守君の横を奪うんだから。



「おーい!〇!」

「あっ守君 おはよう!」

「おはよう!昨日体調悪かったんだろ?今日は大丈夫なのか?」

「うん もう大丈夫ごめんねぇ、皆の応援しないとなのに...役立たずだよね...」



肩を落とすと、守君は私の背中を軽くポンと叩いて「何言ってんだよ!」とニカリと笑いかけてくれた。きゅんとしちゃうんだよねこの顔、この優しさ。



「そうだぁ、守君...!私ねたまごサンド作ってきたんだぁ...後で食べてくれるかな?」

「え!?お前が作ったのか?スッゲーじゃん!昼飯が楽しみだ!」



心の中でガッツポーズ。

きたきた 木野さんなんかより 私の方が女子力高いし、こんな喜んでくれる守君見たことないでしょ...!守君は私の手提げに入っているたまごサンドをのぞき込んできた、手を少し伸ばしたら守君に触れる距離...。

えいっと 私は守君の腕に自分の腕を絡めた。



「うわっ!どうしたんだ...よ...!?」

「うふふ、守君でも ちゃんとそんな顔出来るんだぁ」

「へ?」



守君の腕はかなり男らしくて 私の心を奪っていったあの熱を思い出した、あーあ試合なんかに行かずに攫っちゃいたいなぁ。ぱっと腕を離すと恥ずかしそうに赤くなった守君がじろっと私の顔を見た。



「...急にどうしたんだよ!」

「守君って女の子を意識したりするのかなぁって...思って!」

「そりゃ、こんな...押し付けられたりしたら...!だーー!何でもない!」



胸をわざと押し付けたのが効いたのか、実はムッツリなのかな...?私的にはすっごく嬉しいんだけど、まだまだお話したかったけど無情にも学校が見えてきて校門前には部員達が集まっていた。

木野さんは音無さんと談笑してたけど、私に気付いて1歩後ろに下がる。守君と私がこーんなに近付いて仲良くしてるの 嫌でしょ?私の前であんな風に守君と仲良くしてた罰よ。













前半がもうすぐ終わる。


まだ0-0、岩場ではち切れんばかりの声援を送る野生中の生徒達に負けじと私達も声援を送る中、〇さんは退屈そうに小さな手鏡でメイクを直していた。

正直、血と汗を流し練習をして試合に臨んでいるみんなの姿を前に...よくこんなこと出来るなと驚いてしまったが私がマネージャーに誘った手前何も言えなかった。

その時 染岡君が大きな身体の野生中の選手に吹っ飛ばされてしまった、ピーッとホイッスルのけたたましい音が鳴る...足を抱える染岡君...!

音無さんが黄色の救急箱を手に取り、足早に染岡君が飛ばされた場所に向かった。



「足首を捻ってる...試合は無理だわ...」



染岡くんの代わりに土門君がグラウンドに、FWにあがった壁山君は相変わらず自信なさげに体を小さくした。

そして...豪炎寺君と壁山君の新技は完成しないまま 0-0で前半は終了した。



「やったな!皆!」

「円堂?」

「何言ってんだ コテンパンじゃないか」



壁山君は自信なさげに眉と肩を同じ向きに落として、ずっと 地面を見つめていた。だけど...



「精一杯やった努力は必ず実を結ぶさ!」



円堂君の言葉に疲労困憊の皆は少しだけ笑を見せる、やっぱり...円堂君ってすごいなぁ。そんな 和やかな雰囲気を甲高い声で甘くしたのは〇さんだった。



「みんなお疲れ様!暗い顔しないで、これ見て見て!私が作ったの よかったら食べて?」



「えー!〇さんが作っでヤンスか?」「いっただきますー!」なんて 嬉しそうにみんなが手を伸ばした綺麗な黄色。

鮮やかなたまごサンドウィッチはとても美味しそうで、毒のようだった。




20180409