07

後半戦も終盤に差し掛かる、豪炎寺君と木野さんと音無さん以外は手を付けてくれたたまごサンド。

抜け駆け禁止みたいな目で私を見てきた木野さんも、試合が始まったら 穴が開くほどにグラウンドを見つめてる。こんなのの何が面白いんだろ、壁山君は何度も失敗してその度に豪炎寺君が怒った顔をする。

豪炎寺君が私のたまごサンド食べてくれなかったの、絶対壁山君のせいなんだから...!


でも、つまらない試合ももう終わりそう。

練習してた技が成功?したみたいでやっと1点入った。こういうのを 白熱するとか言うんだろうけど 私はふあーと欠伸を漏らす。



「木野さんー 私、お手洗い」

「え?でも...まだ試合」

「生理なの」



木野さんの疑ってる目が本当にうざったかったから、木野さんの背中に膝をぶつけてやった。



「あっ ごめんねぇ、木野さん」

「...大丈夫よ」



私の方すら見ずに、木野さんは なんともない って顔して守君の方をじっと見つめてた。





「いってきまーす」



返事は返ってこなかったけど、眉間に皺を寄せた染岡君が私を見ていた。

今のバレたかな?染岡君って意外に女の子になびくタイプじゃないみたいだし、注意しておかないとなぁ。












試合が終わった直後。
あたかも最初からずっと試合を見てたって顔しながら、皆に駆け寄る〇さん。嬉しそうに大きく口を開き笑ってる円堂君の顔にズキンと心がいたんだてん...。



「〇さんってあれ、わざとなんでしょうか...?」

「どういうこと?」

「なんか、全部がわざとらしいっていうか...ちゃんと説明はできないですけど」



音無さんの怪訝な表情。音無さんの横顔から円堂君の腕に触れながら微笑む〇さんに目線をうつせば、彼女は私達にも優しく微笑むフリをした。

モヤモヤと嫌な感情が私の中に湧いてくるのがわかる...だけど こんなに良い試合をしてくれた皆の為にも、この感情を胸の棚に押し込むことにした。

勝利の喜びに揺れるみんながベンチへと集まり、今回本当に頑張ってくれた壁山君が円堂君とハイタッチをする。真っ赤に腫れた手を痛そうに震わせて円堂君は自分の腫れた手に息を吹きかけた。



「えっ 氷...?」

「サッカーなんかに そんなに情熱をかけるなんて、馬鹿ね」

「バカってなんだよ...!オイ!」



雷門夏未さん。

彼女が氷の入った袋を円堂君の手にあてて意地悪に笑い去っていった、円堂君はムスッとした顔で 彼女が去っていった方を不服そうに睨んでいる。



「ねえ、守君 私が冷やしてあげる」

「え、大丈夫だって...!」

「だーめ!私の仕事だから...ね?」



ふふふと目を細めて笑う〇さんの手が、円堂君の腫れた手に重なり先程胸の奥にしまい込んだ感情を引きずり出されてしまった。


彼女が怖い。









「今日から私、雷門夏未はサッカー部のマネージャーになりましたので 宜しく」



守君と一緒に部室に入ると、生徒会長の雷門夏未が堂々と仁王立ちで私達を見る。なんなのいったい!女が多過ぎたら困るんだけど。



「〇さんね、宜しく」

「...宜しく」



つっけんどんに返すが、雷門さんは眉ひとつ動かさずに木野さんに今日の練習内容を尋ねる。音無さんもビデオカメラの 充電を確認したりと忙しそうにしている中 私は皆の練習で使うためのタオルとドリンクなんかをギュウギュウとカバンに詰めた。

河川敷で練習なんて、ここからちょっと遠いし面倒くさいなぁ...でも守君は全然私と二人きりにならないし仕方が無い。少しでも彼と一緒に居て 意識させたい。

ちらりと他のマネージャー達を見るとまだ出なさそうだったから先に部室を出た、守君達もう 河川敷着いちゃってるかな。

もうちょっとお話したかったな。











「さあ!練習 練習 必殺技にもっと磨きをかけるぞー!」



オオー!と元気なみんなの声、私はぬるくなったお茶を飲みながらぐるりとその場でターンしてみた。目の前には 守君達右には仲良さげに話をする木野さんと音無さん、後ろには車に乗ってオペラグラスでコチラをじっと見ている生徒会長の雷門さん 左には数十人のギャラリー。

ドカン!ギギッ!と派手な音を立てて雷門さんの乗る車が走ってきたというか 突っ込んできた。



「必殺技の練習は禁止します」

「いきなり何を言い出すんだよ!」



突然サッカー部に入ってきてハチャメチャに引っ掻き回すかのように女王様感出してきちゃって、イヤになる。今日の私はまるで空気で、イライラ。



「ねえ、木野さん」

「どうしたの?」

「雷門さんなんでマネージャーになるの?」

「うーん 円堂君達のサッカーに胸が熱くなったからじゃないかしら、私も音無さんもそうだもの」



貴女を除いてねとでも言われてる気分だ。

サッカーなんて興味が無い、そもそも 恋愛する為にここにいる私からしたら彼女達の熱量がウザくて仕方なかった。










次の日の練習中。

ズカズカと入り込んで来た御影専農のキャプテンとエースストライカーの二人、背の高いゴールキーパーも ピンクの髪の無表情なエースストライカーも不気味な程 感情を見せなかった。

こちらを挑発しているのか、話が通じないのか よく分からないが俺達サッカー部を害虫呼ばわりしてきた奴らなんかに負けてたまるか...!



「理解した」

「ヨッシャー!通じたぜ!見てろー 絶対に負けないからな!」



ズーンと困った様に肩を落とす皆、俺はゴール前に足早に向かう。上に停めている御影専農の車に戻りその二人はユニフォームに着替えて戻ってきた。



「円堂ー!絶対に止めてくれよ!」



染岡の声にガッツが入る!

ホイッスルの音に無表情のままボールを蹴り前に進む、まるで人形のようだ。空高く蹴り上げたボール、その姿は...豪炎寺の技に似ている...いや、そんなわけないよな?



「ファイア トルネード!」



甲高い声がボールに帯びた熱と共に燃える、その技は...!?豪炎寺のファイアトルネード...!!!

すぐさま熱血パンチで弾こうとするも、ボールは ゴールネットを突き破るかのようにシュートが決まってしまった。


目の色をギラリと変えた豪炎寺が俺の方に向かってきた「俺が蹴る」と、だけど...豪炎寺の強烈なシュートをいとも簡単にブロックされた。開いた口が塞がらない、なんだ...こいつら...。



「守君...大丈夫?」

「あっ、ああ」

「ほら 守君が笑ってなきゃ、みんな不安になっちゃうよ?」



〇の優しい声に、少しだけ 元気が出た。





20180412