野坂 悠馬

「野坂さん、コレでいいですか」

「うん 今日も可愛いの選んできてくれたんだ、ありがとう」



彼女はいつも通り小さなブーケを俺に手渡す。

オレンジのガーベラが可憐に咲いている手のひらに小さな花畑、俺が言った通りにいつも飾りリボンは赤色にしてる...彼女は僕の従順なカワイイ女の子。



「今日も行くんですか、」

「何か言った?」


「行かないで」



俺の黒いシャツを小さな手が掴む、彼女は小さく小さく震えて俺の目を見た。



「ねえ 離してよ、せっかく買ってきてくれたお花が枯れちゃうよ」

「あの子を好きなわけじゃないくせに」

「俺を 困らせないでよ」



指先から熱が消えるような感覚、冷めた眼差しを向ければ 彼女はあからさまに怯えた顔で一歩後ろに下がった。

はぁ と小さく溜息を吐いて彼女は俺に「私は野坂さんのなんですか」なんて、決まってるじゃないか...



「君は 俺の大切なモノだよ」

「大切...本当に?」


「ほら こっちにおいで」



ブーケが潰れないように抱き寄せれば彼女は俺の胸元に頬を寄せて、小さな唇で「野坂さん すきなの」と呟いた。



「俺のこと好き?」

「はい」

「じゃあ、嫌われたくないよね」

「...はい、」

「上を向いてごらん」



顎をあげた彼女。

かぷっと効果音がつきそうなほど彼女の唇にかぶりつけば、嬉しそうな悲鳴が俺の体内に流れ込む。こうやって 黙っていたらどこまでも可愛い女の子なんだけど。



「野坂さ、ん」

「もう一回したい?」

「はい...」


「それじゃあ 俺が帰ってくるまで、イイコにしててね」



ポンと頭を撫でれば彼女は不満そうな顔で笑い、ベンチに腰掛けた。俺が戻るまで彼女は何時間でもここに座ってるだろう、まるで忠犬ハチ公のように。



「行ってらっしゃい...野坂さん、」

「また後でね」



茜ちゃんとの甘いキスもイイけど、彼女の苦いキスもすきだな。そんなことを考えながら 病院に足を踏み入れた。




20180518(最低野坂と可哀想な女)