「悪かったな 待たせた」
「大丈夫だよ、どうだった?」
お誕生日おめでとうと言うのはまだ早いみたいで、私は彼に付き合って病院に来た。幼馴染である茜ちゃんのお部屋にズカズカ入るのは気が引けたので待合室で待っていれば 10分弱程で彼は戻ってきた。
もう少し遅くなるだろうと思ってスマホでゲームをダウンロードしていたら...、もう帰ってきた。浮かない顔で。
「茜ちゃん、おめでとうって言ってくれた?」
「...いや」
「そっか」
「悪かったな付き合わせて 出ようぜ」
「凌兵、足りないかもしれないけど私が沢山おめでとうって言うから...元気出して」
きっと数なんかじゃないんだろうけど、私にだって親友がいて その人が抜け殻になった挙句 何も喋らなくなったら私なら耐えれない。
でも、凌兵はそれを私に愚痴ることも無く 弱音を吐くこともなく こうやってお見舞いを欠かさない。
「...お前がそんな事気にすんな」
片眉をあげて困ったように笑う凌兵。
そんな辛い顔をさせるなんて、そんなつもりじゃなかったのに...プレゼントの入った袋を少しだけ強めに握った。
どうしたら笑顔になるだろうか。
▽
「凌兵、遊園地に来たかったの?」
病院を出てから電車に乗りこんで...着いたのは遊園地だった、閉園まで後2時間。彼は私の手を引いて一目散に観覧車へ。
「...凌兵?」
「今日は俺の誕生日だから、好き勝手していいんだろ」
「ふふ、いつも好き勝手してるでしょ」
私をちらりと見て 彼は何も言わずに観覧車に乗り込んだ。可愛い赤の観覧車、二人して乗ればぐらんと小さく揺れた。
凌兵の髪が私の髪と絡まるくらいの距離に座れば、ほんのりと熱を感じた。
「お前、今日もいい匂いだな」
「え 急に何よ」
「いや 思っただけだ」
「そう?」
今日は少しだけボディークリームを多めに塗り込んだ肌は熱を持って匂いが強くなったようだ、凌兵は窓から外を見つめていて アンニュイな表情にどきんとしてしまった。
「凌兵 あの、おめでとう」
「ありがと」
「こっち向いて」
袋から小さい箱を取り出した、凌兵はゆっくりと私の方に目線を向けて そしてプレゼントの入った箱をじっと見つめた。
「...プレゼントか?」
「うん、大したもんじゃないけど」
「開けてもいいか」
大きな手が小さい箱を掴んだ、お揃いのネックレスが入っているその箱は 私が二ヶ月前から沢山悩んで買ったもの...。
喜んでくれるだろうかとドキドキしていると、箱が開けられた。
中からキラっと光るネックレスが顔を出した、少しだけ驚いた表情を見せた彼は 私の方を見た。
「お前、これ」
「...気に入らなかった?」
「違う」
暗い色のシルバーネックレスを手に取って、彼は自分の首につけてくれた。少しだけ胸元の広い格好をしている彼の鎖骨にネックレスの光沢が揺れている、似合ってる...。
「似合ってる」
「こっちはお前のだろ?」
「うん、」
「ちょっと後ろ向けよ」
彼は長い指でネックレスを手に取って、私の首にひんやりしたそれを巻くようにしてつけてくれた。首にひんやりとしたチャームが気持ちいい。
「お前、これじゃ 記念日のプレゼントみたいじゃねーかよ」
「...あっ」
「でも ありがとな」
ぎゅっと抱いて、私の後頭部にキスを落とす凌兵。そこからじんわりと広がる熱に 私は涙が出そうなほど幸福感を感じてしまって、抱き締めてくれた腕を掴んだ。
「おめでとう 凌兵、産まれてきてくれてありがとう」
「...親みてーなこと言うなよ 色気ねーな」
そんなことを言いながらも、少しにやけている声が可愛らしくて私は後ろを振り向き彼にキスをした。
20180525(灰崎凌兵 誕生日2018)