「風丸君、ほら ちゃんとドリンク飲んで」
日陰で休みたくて控え室に向かう廊下の壁にズルズルと身体を滑らす、座り込んだ床はコンクリート特有の冷たさで 冷えを感じながら汗を拭った。
「すまない、少しだけだ 少しだけここで」
「風丸君はよく頑張ってるよ 大丈夫だから、ほら 水分とらないと勝てるものも勝てなくなる」
「...ありがとう」
帝国学園に一緒に派遣された俺達は 雷門にいた頃よりも仲良くなった、そんな俺達はきっとお互い恋をしているのに 言葉には出さない。それは、今の関係が一番心地良いからか それとも俺の心が弱いからか。
彼女から受け取ったドリンクは よく冷えていた、一気に流し込めば 身体の中から嫌な熱が冷えた。
「風丸君が頑張るところを見るのは大好きだけど、無茶するところは見たくないよ」
「...すまない」
「謝らないで 後でとりあえず湿川君にはお説教だね」
握り拳をわざとぎゅっと握って自分の頬を優しく殴って「こうしてやらなきゃ」なんて笑う彼女の優しい目尻に 俺はつい手が伸びてしまった。
彼女の目の下を撫でれば 一瞬ビクリと肩を震わせながらも くすぐったそうに目を細めて笑う、その表情に俺は 砂漠の中に1人立っている気になった。彼女は蜃気楼か それともオアシスなのか。
「少しだけ、甘えてもいいか」
「......いいよ」
彼女の後頭部を抱き寄せて自分のおでこに彼女のおでこをコツンと優しく当てた、お互いの熱と恋が行き来し合うようなその感覚に俺はめまいを覚える。
「俺汗かいてるのに ごめんな」
「いいよ、」
「お前も 少し熱いな」
「...風丸君がいきなりこんな事するから」
「はは、ごめん どうしても触れたくて」
付き合ってる訳じゃないのに俺はこんなにも弱い部分を彼女に見せて大丈夫なのだろうか、少しだけおでこを離せばキスできそうな距離に唇が。
「か、ぜまるくん」
「...危なかった キスしそうだった」
「ちょっと!」
「試合が終わってから 話できるか?」
「...うん、待ってるね」
話の意味を分かってる彼女はきっと俺のほしい言葉をくれるだろう、自惚れながら 戦場へとまた戻る俺の心は先程よりも少しだけ軽くて まだまだ頑張れそうな気がした。
「それじゃ、行ってくるよ」
振り向けば彼女は恥ずかしそうに笑って頷いた。
20180601