手のかかる弟

アツヤは小さな頃から手がかかった。

すぐに僕のものを欲しがるし、怒ったら物に当たる、反論出来なかったら泣いて駄々をこねる。

そんなアツヤも中学2年生になったからか、少しだけ落ち着いたみたいだ。それとも 最近彼女が出来たから大人っぽく見せているのか...。




「なえちゃんと仲良すぎ」

「はァ?お前いつまで 嫉妬してんだよ」

「だって、さっき肩組んでたの見たから」

「お前な試合の後 皆にしてただろうが」



アイスコーヒーの氷が溶けてきた、アツヤの恋人とアツヤの痴話喧嘩を見ながら ストローに口をつけた。



「なえちゃんにだけ デレデレしてたじゃない」

「あんな女にデレデレしてねーよ!」

「してたの!」



二人はよく喧嘩してる、仲がいいなぁなんて思って少しクスリと笑えば彼等は僕の方に凄い怖い顔を向けてきた。



「何笑ってんだよ兄貴」

「二人とも飽きもせずによくそんなに喧嘩するね」

「したくてしてるんじゃねーよ コイツがいつも勝手に嫉妬して泣き喚くんだよ」

「なにそれ酷い アツヤ君がもっと私の事考えてくれたら、怒らないし泣かないもん!」



アツヤは女の子の扱いを本当に分かってない、ごめんねと一言謝って頭を撫でれば女の子達はそれで満足するというのに。

ストローを通ってきた冷たいコーヒーが舌の上を流れていく、後味を楽しみながら僕は口を開いた。



「アツヤ 彼女がいるのに他の女の子に触れたらダメだよ」

「なんだよ兄貴まで!」

「こんなに可愛い彼女がいるのに」



ね?

優しく顎を掴んでアツヤの彼女を僕の方に向かせてみれば、二人して目を真ん丸にした。それが面白くて笑いだしそうになるのを堪えて、彼女の唇にうんと自分の唇を近づけてみる。



「ば、何してんだよ兄貴!!!」

「...嫌だった?」

「俺の女に何する気だよって聞いてんだよ!離れろ!」



べりっと僕から剥がして、アツヤは自分の腕の中に顔を真っ赤にした彼女を大切そうに閉じ込める。狼が威嚇でもしているように低いグルグル声を喉から出すアツヤ。



「お互いヤキモチ妬きなんだね、お似合いじゃないか」



残り少なくなったコーヒー、そこを吸ったからか下品な音が鳴る。それを合図に彼等は目線を絡ませて 照れたように笑った。


まったく 手がかかる。