「何してるの?」
「...お前かよ、またアイツかと思ったぜ」
「基山くんのこと?基山くんなら今 練習してるよ」
イヤホンをグルグルと携帯に巻き付けて目の前にいる女に目をやる、綺麗に整えた前髪が窓から入るぬるい風が揺らす。
「今 隠したの何?」
「何でもねーよ」
「見せて!」
ソファーに乗っかるようにして 俺の隠した小包を手に取り青いリボンをじっと見つめて「...なにこれ?」と不思議そうな声を漏らす。
「うぜー お前にだけは見られたくなかったんだよ」
「誰に渡す気なの?もしかして また変な女と付き合ってるの?」
「付き合ってねーよ なんでもねぇから返せよ」
「やだ!言うまで返さないから」
俺のネックレスを無理やり引っ張って自分の方に寄せる馬鹿女にバランスを崩す、ベタンと鈍い音を立てて押し倒す様に転んだ俺達。
俺と会わない間に香水なんか覚えやがって、花の香りがする首元につい目がいってしまった。
「何照れてるの...?」
「お前だって 顔赤いだろうが」
「それは、こんなに近いからで...」
「お前が無理やりこんな事するからだろうが、バカじゃねえの」
ずっとこのままの体制じゃ気まずいから、身体を起こそうとすると...いつも以上に強い力で俺の腕を掴む。
「いってぇな 馬鹿力...!!」
「だって、また変な女の子と付き合ってるのかなって心配になったんだから仕方ないでしょ!ヒロト君 お金持ちだから変な女寄りやすいんだよ!貢ぐだけ貢がせて捨てられたりしたらどうしようとかって心配になるじゃん!」
「...お前は母親かよ」
小包に目をやれば 青いリボンが少しよれていた、こんなセンスねぇもんを女に私とでも思ってんのかよ。目の前の俺よりも馬鹿な奴を見て わざとらしいため息を吐いた。
「深い溜息やめてよ」
「あのな コレは、親父に渡すんだよ 誰にも言うなよ」
「......ん?」
「親父への贈りもんだって言ってんだろ」
「あのヒロトが お父さんに?プレゼント?え??女じゃないの?」
「お前俺のことなんだと思ってんだよ」
体を少しだけ離して 向き合うような形で大理石の上に座れば俺に合わせて座り直す、まだ俺が何を言ったのか理解出来てないって顔で見てきやがる。
「女の子じゃないんだ...安心した、」
「なんで安心するんだよ」
「だって それは」
「は?お前まさか俺の事が好きとかそんなこと言うんじゃねーだろうな」
沈黙
ぬるい風が 夕方を過ぎて涼しくなったようだ、一向に口を開かない彼女は段々と夕焼け色に染まっていく。
「図星かよ」
「...ちっ、ううん...そうだよ」
「マジで言ってんの?」
「むしろ なんで気付かないの?」
小さい頃から好きだったのに!と少し大きめの声で勢いをつけたつもりか、窓の外に声が聞こえたんじゃないかとヒヤッとした。
俺は 目の前にいる昔から好きだった女の頬に触れようとまた近付けば、自室の扉が開かれて 向こう側にはいつも仏頂面してる親父が立ってた。
「ヒロト、と おや?遊びに来てたのですか」
「吉良さん こんばんは、お邪魔してます!」
「なんだよ 親父」
「...いいえ、二人の邪魔をしてはいけませんからね 戻ります」
小包をぎゅっと握るも 「親父、待てよ」と どうしても言えない、そんな俺に気が付いたのか彼女は俺の指に自分の指を絡めてきた。
「素直じゃないね 二人とも、流石親子だね」
なんて 痒くなるような言葉を俺に向けて言ってきたから、照れ隠しついでに 鼻の頭をかじってやった。
20180803