「ヒロト」
「なんだよ」
ヒロトはゆっくりと長い睫毛を動かしてピンク色の綺麗な瞳をこちらに向ける、雷門との試合後 空いていた時間を埋めるかのように基山君含む永世学園の皆とヒロトはサッカーの話をしていた。
日も暮れてきたし帰ろうと言い出した涼野君の後ろを皆が名残惜しそうについていく、基山君とヒロトは静かにお互いの瞳をぶつける様にしばらく見つめあって 満足気に視線を外した。
「良かったね」
「負けたのに良かったねなんて言うやつがいるかよ」
「違うってば 皆と普通に話が出来て良かったねってこと」
「はぁ?」
照れると彼はフェイスペイントをぽりぽりとかくクセがある、何を馬鹿な事言ってんだと私の肩にぶつかってくるヒロトにバランスを崩して転びそうになった。
生ぬるい風さえも汗を流した後だからか気持ちがいい 手に汗握るような後半戦に私もじっとりとかいてしまっていたことを思い出して、少しかさついた肌に汗ふきシートを滑らした。
「お前家帰ったら風呂入るだろうが、今拭かなくてもいいだろ」
「それまで気持ち悪いの嫌なんだもん」
「じゃあ さっき拭いときゃよかっただろ」
「だって男の子の前で堂々と拭くの恥ずかしいんだもの」
「俺の前では平気なのにか?」
しまった と思ってももう遅い、ヒロトは私の目の前に立って少し怒ったような顔で見てる。
「基山君達にそんな姿見られたら恥ずかしいじゃん」
久しぶりに嫉妬してくれたからか 私はワザとそんな事を言ってみた、基山君達ごめんねと心で謝りながら 恐る恐るヒロトの様子をうかがえば面白いほど不機嫌になっていく。
「ヒロト嫉妬してる...?」
「してねぇよ」
「してるじゃん」
「はぁ?お前いい加減にしろ」
グイッと私を掴んで自分の方に倒して来たヒロトはまだ拭いてない首をベロリと舐めてきた、舌の感触に驚いて飛び跳ねれば「しょっぺぇ」と意地悪く笑うヒロトの顔がキスできそうな程近くにある。
「...なんで舐めるのよ」
「黙らせるために決まってんだろ」
「嫉妬してたくせに」
「当たり前だろ好きなんだから」
どくんと 心臓に悪い一言が一瞬で血液に溶け込んでしまったようだ、赤くなる頬は夕焼けのおかげで隠れているけど 心臓の音だけはどうしで誤魔化せない。
「お前 心臓の音激し過ぎだろ」
「...うるさいな」
「わざと嫉妬させてぇならもっとえげつねぇこと言えよ、馬鹿女」
「そんな事言ってたら絶対泣かせてやるから 馬鹿男」
今日は二人とも機嫌がいいからか 自分達の会話に何故かツボってしまって抱きしめ合ったまま声を出して笑う。
一緒にサッカー出来る仲間を手に入れて これから支え合うことが出来る友人を手に入れたヒロトはこれからもっと強くなるだろうなぁと思って 嬉しくて背中に回した指に力が入った。
20180810