「俺はずっとお前達に謝らなければいけないと思っていた事があるんだ」
「ん?急になんだよ鬼道?」
オレンジ色に染まる河川敷、激しい練習で流れ出した汗が顎から土にぽたりと落ちていく中 鬼道君は申し訳なさそうに眉を垂らした。
「俺とお前達が初めて出会った日のこと 覚えてるか」
「帝国時代の鬼道のことか?」
「そうだ」
ぱちぱちと瞬きをした後、ドリンク片手に染岡君と円堂君が楽しそうに声を上げた。
「お前まさか あの時俺達をボコボコにしたこと謝りたいとかじゃねえよな」
「...染岡、笑い過ぎだ」
「鬼道達 帝国のシュートマジでキツかったけど、あれはあれでいい思い出だぜ 鬼道!俺達が強くなるキッカケにもなったじゃないか!」
「誰かさんがサッカーに戻るキッカケにも...な!」
地面にぐたっと座り込む染岡君は豪炎寺君の肩を抱き自分に引き寄せる、無言で薄らと微笑む豪炎寺君を見て 私と秋ちゃんは目を合わせた。
次々に皆が鬼道君の悪役っぷりが凄かったとかあの頃は怖かったとか...そんな言葉を投げかけると鬼道君は垂らした眉をもっともっと情けないくらい落とす。
「すまなかった みんな」
「なんか、鬼道さんが謝るの気持ち悪いでヤンス...」
「まあまあ 栗松そう言うなよー 鬼道、顔あげろって」
土門君の声に恐る恐る顔を上げた鬼道君の眉毛は相変わらずたらんと落ちていて 捨てられた猫をみてる気分になる、他の男の子達よりも小柄な彼がもう一回り小さく見えて...
思わず声が漏れてしまった。
「あの頃は みんな色んな事があったよね、鬼道君も豪炎寺君も 他のみんなも沢山悩んでさ...」
「その通りだ、鬼道 だからもう気にする必要なんてない」
「...お前達がそうでも俺は良くないんだ」
頑固な彼に円堂君と豪炎寺君は目を合わせて優しく笑う。
「ここにいる俺達はサッカーが出会わせてくれた最高の仲間だろ!鬼道のあのプレイは無意味な暴力じゃなかった 俺達に強くなりたいって気持ちを与えてくれたし、あの頃は何がなんでも勝利を掴まなけりゃダメだっただろ?」
ちらっと春奈ちゃんを見つめてから鬼道君へと目線を戻す円堂君はいつも通りの優しい目をして「だからもう気にするなよ鬼道!俺達はずっとずっと仲間なんだからさ!」と力強く鬼道君の肩を引き寄せた。
「えっ、円堂...!!」
「そもそも謝るの遅いだろ」
「そうだそうだー!」
豪炎寺君と円堂君がじゃれついて鬼道君を潰すようにしてぐりぐり頭を押さえつけば、壁山君と栗松君...そしてみんなが鬼道くんを囲んだ。まるで 向日葵みたいにぎゅっと綺麗な黄色が揺れて、私達マネージャーは3歩後ろでその姿を見つめた。
「...男の子って、やっぱり いいな」
「だよね」
秋ちゃんは「鬼道君が怒る前に次の練習の準備しよっか、男の子達だけにしてあげよう」と綺麗に笑う、そんな彼女に頷いてもう一度だけ彼等を見てみた。
可愛い笑顔で笑うみんなの中心で困ったように眉を顰める鬼道君が、少しだけ...口角を上げた。
20181209