意地悪な鬼道有人

「寒かったな」

「暖冬だって言うけど、絶対嘘だよね」



彼女は心底嫌そうに溜息を吐いた。

繋いでいた手を離せば2人の間でじんわりとかいた汗が一瞬でひいてしまう、だが店内の暖かさにタートルネックと首の間が一瞬で蒸れた。



「...店の中に入るとさ冷たいの飲みたくなるよね」

「やめておけ お前はそうやっていつも冷たいものを頼んで後悔するだろう」

「でも飲みたいもん」

「好きにしろ」



呆れ顔で彼女にそう言えば 悪戯っ子のような笑顔を俺に向けて彼女は注文カウンターへと向かった、春奈もコイツも何故こんなにも冷えた飲み物が好きなのだろうか。

注文カウンターにずらりと並んだ



「チョコレートフラッペのトールサイズで」

「...冷えるぞ」

「いいの!」



俺はブレンドのホットを注文して彼女と受け取りカウンターへと移動する、緩やかなカーブになっているカウンターを撫でながら辿り着いた先で彼女は俺の方をちらりと見て歯を見せた。

自分から目を合わせておいて少し照れくさそうに笑うその仕草が可愛らしくて、誰にも見られないように壁に向かって俺も笑を零した。



「お待たせしました」



落ち着いた様子の店員からホイップがたっぷりとのっているフラッペとブレンドのコーヒーを受け取り奥の方にあるテーブル席へと向かった。











「うう...っ、さむい」

「だから言っただろう」

「もっと強く止めてよ!」

「何度も同じ事を言うのは嫌いでな」

「有人冷たいー」



あんなに冷たいものを一気に飲めば体が冷えるのは当たり前だ、帰り道 彼女は震える手を俺の腕に絡ませて悪態を吐く。

夜中のように真っ暗な空からは雪でも降り出しそうだ、ゴーグル越しの彼女の顔はあまりにも不機嫌で笑ってしまう。



「なんで笑うの」

「いや 子供のようだと思ってな」

「バカにしたでしょ!」

「...まあ、そうなるな」

「ひど!」



唇を尖らせて愛らしい表情の彼女はきっと一生懸命俺を威嚇しているつもりなのだろう、休みの日だからとうっすら化粧をしている彼女の綺麗なアイライナーが俺を睨んだ。



「有人すぐ人のことバカにする」

「バカにしている訳では無い、お前がいつまで経ってもバカなんだ」

「またバカって言ったー!」

「うるさいヤツだな もう少しこっちに来い」



寒い寒いと震えながら俺の腕を離したり掴んだりを繰り返す彼女の腰を抱き寄せた、ピッタリと身体がくっつけば彼女は少し照れた様子で誰もいない所へと目線を向ける。

妙に少女らしくて そして、少し上から見えるアイライナーは女っぽかった。



「何を照れている」

「有人ずるい」

「お前が寒い寒いと繰り返すからだろう」

「...本当は私の事触りたかったくせに」

「そうだな」

「素直になるのやめて、」



腰に添えた手にぐっと力を入れれば彼女から小さく声が漏れる。



「変なところ触らないでよ...!」

「ここは腰だ」

「だから、」

「なんだ?」

「あーもう なんでもない」



いじわるだなぁと心底嫌そうに溜息を吐きながら 口角が緩む彼女の顔を見て、キスがしたくなってしまう。家まで後数分間果たして我慢出来るだろうか、なんて我ながら馬鹿な考えを鼻で笑ってみせれば 自分が笑われたと勘違いした彼女が俺の肩に噛み付いた。




20190110