ラスティネイル
カランッ、ロックグラスに広がる錆びた釘色の液体 その中央に存在感を放つ氷が音を立てた。一口飲むと芳醇な香りが口にまったり広がる。
「…◎、お前がいれる酒が一番だ」
「ふふ 影山さん、今日はなんだか疲れているみたい」
くりっとした大きな目が私を捉える、ゆっくりと瞬きをして「もう一杯入れるね」と 新しいロックグラスを取り出し また先程と同じように注いだ。
綺麗に整えられた爪、華奢な手首が妖艶に動いて それを私はじっと見つめた。
「はい どうぞ」
残っている酒を飲み干し、私は二杯目に口をつけた。
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影山さんはいつもラスティネイルを飲む、何か意味があるのだろうか。私は高校を出て18歳からこのバーで働いているがまだまだ分からない事ばかり。
味を確かめようにも私は未成年なので無理、お縄になりたくはない。なのでいつもマニュアル通りに作っていた、初めて私がラスティネイルをいれたのは影山さんと出会って3か月後の事だった、いつものバーテンはいないのかと尋ねられ「すいません、今日彼お休みなんです」と答えると 落胆する様子を見せて 影山さんは笑った。
「そうか、残念だ」
「あ、あのもしよろしければ私が作ってもよろしいでしょうか?」
「...あぁ、では任せよう」
ぎこちない手付きでカクテルを作る私の手元を彼はじっと見ていた、そんなに観られたら緊張してしまうのに...。
コトンとコースターの上にグラスを置くと、影山さんはゆっくりとそれに触れた。
「ど、どうでしょうか?」
「ラスティネイル…か」
一口飲むと、どことなく影山さんの強張っていた顔が少し柔いだような気がした。それから影山さんは私のいれるカクテルを目当てに 常連となった。
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「カクテル言葉を知っているか」
「いえ…あまり詳しくありません」
「そうか」
「ラスティネイルのカクテル言葉はなんですか?」
「私の苦痛を和らげる」
◎は暫く私を見つめてからパチパチと瞬きをすると、にこりと笑った。
「いつでも痛みを和らげてあげる」
少し子供っぽさの残る笑顔が眩しくつられて私も笑った。
ラスティネイル
私の苦痛を和らげる
20131219
⇒20180506 修正