毎日悩んでる。
将来の事を考えるとつい2時間前くらいに食べた優しい味の雑炊が胃から出てきそうだった、34席ある中の1席の命に過ぎない私は この教室を出ても インスタ映する人生を送れるわけもないし、ただ平凡に生きて 平凡な結婚をして 平凡に歳を重ねるんだろう。
1限目が終わる、チャイムが鳴り終わらぬ間にばたばたと慌ただしくトイレに行く女生徒達...あの子たちはきっと 20歳になってもああやってアヒルの親子のように連なってトイレに行くんだろうな。
教科書の掠れた所を指でなぞる、もう2年生も終わりか。3年生には何かあるといいな、少しでも刺激的な生活を送りたくて買った 錆牡丹色の口紅は一度試し塗りしただけで机の奥の方でプリントと一緒に挟まってるし 誰に見せる訳でもないのに太ももに付けてきたガーターリングをスカートの中に隠している これを見せる相手も見せれる勇気もなくて...学校という場所は 窮屈でつまらないな。
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新学期を告げるのは 桜と新入生の姿。特別仲のいい先輩は居なかったので 卒業式も欠伸を30回くらいしたら終わってた。3年生になり安心したことが1つだけある、受験勉強に没頭して他の事は考えずに済むこと。それだけ。
1年生の時も2年生の時も毎日付けてきた太もものガーターリングは レースがもうごわごわになってきててチクチクするけど、私は付けずにいられない。ポケットに入っている口紅も、持たずにはいれらない。まだ何かを期待してる私には これらの非日常が必要なのだ。
校門辺りが騒がしい 私の視線の先には、サッカー部の取り巻きたちが居た。「豪炎寺君!お疲れ様でした...!」「鬼道君 かっこよかったです」「風丸君すごかったよー」なんて 黄色い声が今朝の甘ったるいココアを思い出す。彼女達は サッカー部の男の子達をぐるりと取り囲んで困ったように笑う男の子達は足速にそこから動こうとしていた。
そういえば...海外でサッカーの試合に出てたんだっけ、詳しくないけど 少しだけテレビで見たり 先生達が鼻高々に自慢していたなぁ...って。彼等を見るのはやめて、校舎へ向かった。
3年何組になるのかな、廊下に貼り出された数枚の紙から 自分の名前を探す。(〇 ◎)の文字を見つけた。
「3―2か」
廊下には沢山の生徒が新しい水槽に向かいフラフラ泳いでる、 足を踏み入れた 今日から私の日常になるその空間には先程のサッカー部の男の子が見えた。
私の横の席...?
青いゴーグルに、ドレッドを上の方に束ねた彼は 子難しそうな本を読んでいる。出来るだけ音を立てないように椅子をひいて座る時に...私の横を凄い勢いでおちゃらけた男子生徒が走り去っていって、膝上5cmくらいの控えめに折ったスカートがめくれて 太ももがむき出しになってしまった。走り去っていった彼等をちらりと見てから私の方に視線をずらすゴーグルの彼...
「あっ」
「...すまない」
ゴーグルの彼は眉間に皺を寄せて私の太ももから目線を外して、何事も無かったかのように本をまた開いた。
「...あの、私 〇 ◎」
「あぁ 俺は鬼道有人だ、よろしく」
「鬼道くん、よろしく」
優しく笑った鬼道君はまた本に目線を戻した、難しそうな内容のその本は まるで鬼道君のように感じた。
この、ガーターリングは明日からは 付けないでいいかもしれない。
20180323