初夏の香りが懐かしくなる

「豪炎寺くん、お誕生日おめでとう...あのコレプレゼントです」



彼女は同じクラスの〇◎、最近サッカー部のマネージャになった。薄いピンクの箱に 真っ赤なリボンが行儀よく飾り付けられたそれを受け取ると彼女は照れ臭そうに笑った。



「ありがとう 大事にするよ」

「あのっ、豪炎寺くん...」

「どうした?」

「......ずっと、豪炎寺君のことが好きでした 返事はスグじゃなくていいから その待ってます」



赤い頬を手の甲で押さえて彼女は走って行ってしまった、スカートが揺れ 彼女の髪が風と同じ方向に流れる。

俺は彼女の名前以外知らない。

いや...実を言うと好意を抱かれてるということには気が付いていた。渡された箱の中身は彼女が俺への恋を育てて選んでくれた 素敵な時間が詰まっているのだろうか、開けるのが勿体なくて 鞄の中にいれて部活に向かった。


部室に入れば円堂や鬼道達にプレゼントを貰った、もう持っているのにサッカーボールを渡してきた円堂に苦い笑みを浮かべれば マネージャー達からは手作りのクッキーが...

こうして友人達に祝われると、誕生日もいいものだなと思えてきた。部室の隅でそんな俺を見て微笑む〇は 優しい目を俺に向けてる、そういえば いつもこうやって見られていた。



「ヨシ!それじゃあ、練習するぞー!」

「皆 プレゼントありがとう、帰ってから開けさせてもらう」



すべてロッカーにいれて俺はジャージを脱いで、グラウンドへと向かった。









フットボールフロンティアが終わり、バタバタと忙しい毎日に追われ〇から貰った告白の返事すら出来ずにいた。

〇は何事も無かったかのように過ごしている、彼女の事を少しづつ知っていけたというのに 俺は彼女が待っているであろう言葉を言えずにいる。


明日伝えよう明日伝えようと思っていたら、木戸川清修への派遣が決まってしまった。彼女は音無や鬼道と同じ星章学園に、離れ離れになってしまうのか。



「豪炎寺君 今日でしばらくお別れだね」

「ああ...」

「豪炎寺君 あの、」


「◎、そろそろ星章学園へと向かう時間だ」



鬼道が〇の肩をぽんと叩いて連れて行ってしまった、きっと 告白の返事を聞こうとしていたんだろう 彼女はバツの悪そうな顔をして 言ってしまった。



「〇」



俺も好きだ、付き合ってくれ

もうすぐまた俺の誕生日が来る...1年も待たせた返事を情けないほど小さな声で呟いてみても彼女には届きはしない。




20180530(豪炎寺誕生日 2018)