私は、泥だらけになりながらボールを追いかける、豪炎寺が好きだ。
放課後。
クラスメイト達が教室の外へ流れていく。部活に向かう人や塾に向かう人この後遊びに行くのかほんのりと色づくリップを塗り合うちょっと派手な女の子達を尻目に 隣の席の豪炎寺に声をかけてみた。
「そっか そういば、毎日だよね」
「いつもここの窓から俺達を見てるくせに変な事を聞いてくるんだな」
「...たしかに」
ふふっと鼻で笑えば つられて彼も軽く笑いかける。
教室の中には私と豪炎寺とせっせと日誌を書いている日直の二人だけで、急にひんやりと冷えてきた教室に膝が震えた。
「急にそんな事を言うから 俺をデートに誘う気なのかと思った」
次に震えたのは心臓だった...。
この人はなにを言ってるんだろう、眉一つ変えずにそう言った豪炎寺は鞄を持って椅子から立ち上がる。綺麗に整った眉やかっこよくセットされた白い髪 切れ長の瞳、順に追っていけば目が合ってしまった。
「お前もそんな顔するんだな」
それじゃ 俺は部活に行ってくる、そう言い残しぽんと肩に乗せてきた手のひらは熱くて 私の体はぼんっと燃え上った。
「が、頑張って...今日も!」
「ああ 今日も、そこから見るんだろ」
豪炎寺の指した先にあるのはいつも私が彼を見ている窓だった。
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「修也くん...ずっと前から好きでした、付き合ってください...!」
どこの誰かもわからない 人にすぐ流されそうな女生徒は俺の顔をマジマジと見つめながらわざとらしく瞳を揺らした、昔ペットショップで見たチワワはこんな目をしていたな。ぼんやりそんなことを考えていたら俺に告白してきた女生徒が1歩近づいて来た。
「修也くん聞いてた?」
「...俺のどこが好きなんだ?」
「えっ、それは...カッコいいとこ サッカーが上手いとこ それに」
「サッカーしてるところ見たことあるのか?」
初めて見る 初めて喋る女生徒は3歩下がった、きっといつもと同じだ 俺の事なんて何も知らない人間。
「一目惚れしたの、わたし」
「そうか」
これ以上話すことなんてなさそうだ。
横を通り過ぎて教室に向かおうとすると、女生徒は俺の腕を掴んできた。
「ね、ねえ 修也くん 返事は?」
「そもそもお前の事を知らない」
するりと女生徒の腕を抜けて俺は階段をのぼる、教室につけば 彼女が窓におでこをつけて外を見ていた。
「俺が居なくても そうやってグラウンドを見てるんだな」
「ご、豪炎寺...!」
目をぱちぱちとさせて 彼女は驚いた表情で俺を見つめる、何度みても飽きない彼女の表情に俺は安心した。
「サッカー部見てて楽しいか?」
「...うん、皆が少しずつ少しずつ成長していく所とか 笑ってる顔みてると元気出るんだよね」
「そうか」
楽しそうに笑う彼女の横にいつものように座れば 不思議そうな顔で見つめてくる、そんな彼女の髪に触れてしまった。
「豪炎寺...?」
「今度 試合観に来てくれるか」
「ふふ 今度も でしょ」
「そうだよな お前はずっと俺達を見ててくれた」
「何急に...変なの」
「今日 部活が終わった後、付き合ってくれるか 〇」
「えっ!?」
「ダメなのか?」
彼女はいつもよりも真っ赤な顔をして俺を見るとふるふると首を横に振る、そんな様子が愛らしくて 俺は緩む口を指先で隠してみた。
20181212