ギャルみこし

お母さんに勝手に申し込まれてしまったギャルみこし、逃げようとする私を「大人になってしまったら 出来なくなることの方が多くなるんだから行ってきなさいよ」なんて言われてしまって トボトボ祭り前日の練習に参加してきた。

渡されたハッピとサラシにはちまき...あーあ、明日は鬼道君を誘ってお祭りを楽しもうなんて思っていたのに。



「あれ?土門くん」

「おっ ◎ちゃん、鬼道は?」

「いつもいつも一緒にいるわけじゃないよー」

「そりゃそうか...って、あれ?◎ちゃんギャルみこし出んの?」

「あっ...バレちゃったか あの、鬼道君には絶対言わないでね...」



土門君は私の目をじっと見てぱちくり瞬きをしたと思えば、へらっと笑った。あ、この男...絶対言うな。と思ったけど 言われたら言われたで鬼道君に来ないで!って念押ししたらどうにかなるだろう あんな姿見られたくないもの。



「いやー ギャルみこしかー、夏だねぇ」

「土門君はお祭りでお神輿担がないの?」

「俺はパス 汗くさいのはサッカーだけで勘弁、じゃ!俺 西垣達と用事あるからさー」



スタイルの良い土門君の後ろ姿を見つめれば、ひらひらと手を振ってた。所々に浮かび上がってくるアメリカンスタイルに笑ってしまい、浅く溜息を吐く。

どうか 鬼道君が見に来ませんように...











「お前が神輿を担ぐと土門に教えてもらったから 見に来た」



いつもとはまったく別人の姿に ドキッとした、彼女は恥ずかしそうな姿に怒った可愛らしい声で「土門君やっぱりチクった...」と恨めしそうに呟く。

ねじりはちまきを指でグイっと引っ張って◎は両てのひらで自分の顔を隠す。



「もー 恥ずかしい...こんな姿見られたくなかった」

「似合ってるぞ」

「いや そういう問題じゃなくて...」

「何か問題でもあるのか?お前の頑張る姿を見る絶好のチャンスだと思ったのだが、帰った方がいいか?」



俺がわざとらしく眉を垂らせば 、いじけた様子で「帰らなくていいよ」と◎は声を漏らした。周りを見れば 高校生や大学生に混じってちらほらと中学生や小学生の女子達がわいわいと談笑を楽しんだり 写真を撮ったり 彼氏と抱き合っている、カラフルな髪飾りに囲まれて 楽しげな笑い声が溢れるこの場所で◎だけが頬を赤らめて俺から目をそらす。



「お前は俺の応援をしてくれるだろう」

「それは...鬼道君がサッカーしてるところが好きだから」

「いつもは俺が応援してもらう側だろう、だから 今日はお前に頑張れと言いたくて来たんだ」



なんて、言っても彼女はまだ嫌がるだろうかと思い じっと見つめていたら◎は笑顔とまではいかないがゆっくりとこちらに微笑みかけた。

商店街の中を吹き抜けるなまぬるい風を背中に感じ、汗がたらっと背筋を伝う。夏によく似た微笑みを浮かべこう言った。



「...なんか、そういうの照れるね 鬼道君も同じ気持ちでピッチに立ってるのかなって思うと にやけちゃった」

「俺だって みんなの前で頑張れとお前に声をかけられたら嬉しくても照れるさ」

「じゃあ これはお互い様ってこと?」

「ああ」



なんて可愛いことを言うのだろうか、口角がぴくりと震える。俺までだらしなく笑ってしまうのは 恥ずかしくて、彼女にアイフォンのカメラを向けた。



「これも 大切な思い出だ、撮っていいか?」

「もう 撮る気満々なくせに...!」

「撮るぞ」



何か文句を言っているが ボタンを押して何枚か撮れば、段々と笑顔になっていく彼女がフォルダに保存されていく。



「どうせなら、二人でも撮ろうよ」

「そうか なら誰かに頼もう」

「インカメでいいじゃんか」

「インカメ...?」

「本当に 鬼道君中学生?貸してみて」



俺の手からアイフォンを奪い取るようにして 手に持ち、彼女は液晶画面の方を二人の顔に向ける。ああ...そういえば 春奈がこんな事していたな、あの時は俺達がウサギになってしまって驚いた。



「ほら 撮るよ、ちゃんとカメラの方みて」

「...ああ」



カシャ カシャ 2枚撮った彼女は俺の手にアイフォンを戻して、神輿の方に一歩下がった。



「恥ずかしかったけど...ちょっと、楽しみになってきた」

「お前のそんな姿を見ることが出来て、夏に感謝だな 頑張ってこい」

「うん!もう鬼道君 帰るの?」

「いや 待ってるさ、神輿を担いでるお前も撮らないといけないからな 終わったら冷たいものでも食べようじゃないか」



俺がそう言えば 彼女は「え、まだ撮るの...?」なんて眉間に皺を寄せたが、すぐさま笑顔になった。



「じゃあ、行ってくるね 鬼道君 終わったらかき氷食べよ!」



最高の笑顔で 彼女は神輿まで走って行って俺に手を振る、その様子があまりにも可愛くて手を振り返し液晶画面をスライドさせた。


"ありがとう お前のおかげだな"


土門にメッセージと共に◎と俺のツーショットを送れば、神輿を担いだと同時に"ごちそうさま~"というメッセージと共にうんざりしてると言わんばかりの気持ち悪い顔のスタンプが送られてきた。




20180712