俺の椅子に誰かが座ってた。ふわっと巻かれた柔らかい髪の毛が窓のから吹く風に揺れて、甘ぇ匂いがした。天気がいいから太陽が 女のアクセサリーを光らせてた。
「あ 染岡君!ごめんねっ!」
「俺のこと知ってるのか?」
「知ってる知ってる!
いつも試合見てるのっ 染岡君握手しよ」
派手な見た目とは裏腹に、人懐っこい笑顔で...正直かなり好みだ。可愛い唇が何かを言っているが 見とれてしまってほとんど耳に入ってこなかった。
「...って事なんだけど?いい?」
「え、あ あぁ ? いい...ぞ?」
「やったー!今日が記念日ね!」
ん?記念日??
周りのクラスメイトがひゅーひゅーと口笛を吹いたり、俺達を茶化す。もしかして 俺 告白されたのか?それを聞き逃したのか...?
「じゃ!放課後また会いに来るから!ばいばい竜吾君!」
「お、おう...!」
嵐のように去っていった名前も知らない彼女、残された俺はわらわらと近寄ってくるクラスメイトからの茶化しに 困惑した。初めての告白を聞き逃すなんて...
俺のバカ野郎!!
放課後、部活に向かう為の道を歩いていたら。前から 俺の彼女...が。彼女って呼んでいいのか??
「よ、よぉ...」
「竜吾君じゃん!今向かおうと思ってたんだ!」
「俺を迎えに?」
「そうだよ?だって、付き合ってるし」
「そ、そういうもんなのか...」
「やだなー!付き合うの初めてじゃないでしょー?」
沈黙。付き合うのなんか初めてだよッ...心で叫びながら俺は彼女の顔を見た。「え、マジ?」ドン引きしてるのか嬉しがってんのかどっちか分かんねえけど引かれてないと 嬉しいなんて馬鹿な事考えてる俺。
「私が初カノ?嘘でしょ竜吾君そんなにカッコイイのに...?」
「俺みたいな野暮ったい男がか?」
「そのホクロはセクシーだし、日焼けもかっこいいし!サッカーしてるところなんか めちゃくちゃかっこいいのに?」
「お前...」
知らぬ間に付き合ってしまっていた俺の彼女は、何だかとてもいい女だった。
「あ、部室着いちゃった」
「こんな所までありがとな...」
「竜吾君頑張って!練習見とくから!」
部室に入ろうとドアに手をかけた瞬間、横から柔けぇもんが頬っぺたにあたった。と...同時に ドアを開いてしまった...。
「あっ」
着替え中だった 部員達が俺達のことを口をぽかんと開けて見ている。どうすんだよこの空気...。
「やだっ、竜吾君...!ごめんね!!」
一目散に逃げていった俺の彼女、逃げることの出来ない俺は ニヤニヤと笑う皆に 話をする為に
部室のドアを閉めた。
「あれー?どうしてそんなに顔が赤いでヤンスか??」
「サッカーバカの染岡が彼女とはな」
「うるせーよ 栗松...鬼道...」
体温が上がりすぎたこの身体に、この狭い部室は拷問だった。
20180227