ホワイトピンク

零治さんの毎日は帝国学園と自分の家の往復、だけど・・・たまに気が向いた時にだけ私と街まで寄り道をしてくれる。

今日は珍しく零治さんの運転で街に来た、ハロウィーンを慌ただしく楽しんだ街の住人達の関心は今やクリスマス。浮気者達は楽しそうにイルミネーションをチーク代わりに街を歩く、白や赤やゴールドのキラキラが浮かれた恋人達のように目に焦げ付く中私と零治さんは会話をせず、だけれど腕が触れ合うくらいの距離で静かにレンガの道を歩いた。


「あっ、そういえばもう11月過ぎたんだっけ」

「どうかしたのか」

「あれ 新作のフラッペ飲みたい、零治さん寄っていこう 零治さんもカフェイン切れてきたでしょ」

「一人で買って来るといい 私はここで待っている」

「えー外であんな冷たいもの飲ますつもりなの零治さん、ありえないよそんなの鬼すぎる最低・・・ってそんな顔しないでくださいよ冗談ですって、中空いてるしちょっとだけ休憩しましょう」

「・・・調子のいい奴だ」


心底面倒くさいと言いたげな重苦しいため息を吐いて零治さんは私を寒空の下に置き去りにして店に入る、有名なロゴの女と目が合う、私はいつもいつでも微笑んでいる女に何笑ってるのよと睨みながら彼の後を追った。

店内は随分と暖かい、急な温度差にぞわぞわっと背筋が気持ち悪く震えたあと腕にぽつぽつ鳥肌が立つ、いつの間にかショーケースの前に立っていた零治さんはわたしのほうをゆっくりと向いて「どれにするんだね」とどうでもよさそうな声色で聞いた。


「私この新作のいちご」

「お連れ様はどうされますか?」

「エスプレッソでしたよね零治さん」


無言で私を見ると彼はポケットから無造作にお札を取り出して私に渡すと一番端っこの席に座った、オロオロとする店員さんに「エスプレッソでお願いします」と笑いかければ私と同じような笑顔を付けて「かしこまりました」とレジを打った。







「甘ぁ・・・・・・」

「辛いとでも思っていたのか」

「でもこれが美味しいんですよ、ほら飲んでみて零治さん」

「いらん」

「私の人生の味知りたくないんですか?」

「人生の味・・・?」

「こんな味してるんですよ私の人生」


無理矢理緑色のストローを私の唇に刺すようにズイっと砂糖の塊を近付ける◎。私は止めておけばいいのに薄く唇を開く、嬉しそうな顔で「飲んで」と笑う彼女の飲みかけのフラッペは目眩がするような甘さと外の冷気を嘲笑うかのような冷たさだった。嚥下すると喉が砂糖で焼けるこんなものをよく飲めるな。


「零治さんもそんな顔するのなんか面白い」

「こんなものを飲んでいたら今に肥満になるぞ」

「少しふっくらしててもイイ女だもん」


べろりとそんな音がしそうな舌を下品に私に向けてもう一度ストローを口に含む◎は私が飲んでいるエスプレッソをジッと見た後手を伸ばしてきた。


「お前の口には合わないと思うがね」

「零治さんっていつも苦いのばっかりしんどくなりません?」

「お前のやつを飲むよりは断然いい」

「・・・うぇっ、にが・・・にがいとかじゃない・・・もうなにこれ・・・っう」


唾液がじわっとシミ出しているのが分かる、彼女は舌先に唾液を垂らしながらガチャンと音を立ててコーヒーカップを戻すと悪魔をすり潰してしまいそうな程甘い砂糖水を半分ほど一気に飲んだ。


「零治さんの人生の味って感じ・・・二度と飲まない」

「お前のせいで減ってしまった」

「零治さんの胃袋守った私にありがとうもないんですか、そんなに濃いの飲んでたら胃おかしくなりますよ」

「いつからお前は私の母になった」

「零治さんもたまにはこういう甘いの飲んだらいいのに」

「そんなものを飲んだ方が病気になる」


あどけなさの残る頬を幼女のように膨らませ◎は私の革靴をぽこんと蹴飛ばした、ホイップと氷が混ざりあった薄い白を吸えばズズズと下品な音が鳴る、彼女は先程よりも冷えた指先を私の太腿に置き「零治さん 寒い」と今度は甘えてきた。

忙しい女だ、半ば呆れながらも少し残ったエスプレッソと彼女の持つカップを返却口へと置きすっかりと暗くなった外へと連れ出した。


「零治さん寒い」

「あんなものを飲むからだ」

「美味しいのに」

「あれは甘いだけの毒だ、違うか?」

「毒って・・・零治さんが飲んでるやつだって毒じゃん」

「お前のよりマシだ」

「えー・・・あっ、思ったんですけど私達の人生の味が混ざるとちょうどいい味になるんだと思いますよ、多分」


へらっと憎めない情けのない笑を零して◎は私の手首を掴む、死んでしまうのではと不安になるくらい冷たい指先で私の手首の突起をまるで子猫でも撫でるように優しく擦ると「寒いから早くお家入りたいな」と口角だけを淫靡にあげた。







ひんやりとした部屋に入り玄関に置いてあるキャビネットの上に鍵を落とす、ジャラリという音と彼女が靴を豪快に脱いだ音が混ざり合う、私は革靴の踵部分に人差し指を入れて靴を脱ぐと寒さで縮こまった足裏が幾分かマシになった。

殺風景な寝室に服を投げ散らかして◎は私に「零治さんシャワー浴びようよ」と甘えた声を出す。


「先に入って来るといい」

「やだ」

「我儘を言うな」

「やだったら」


私の手首を掴んで自分の身体を抱き締めさせる◎、素肌から発する熱が私の手首から全身に彼女の色を回す。


「◎」

「零治さん、一緒にシャワー浴びてくれないならベッドに入ってよ」


彼女はそう言って私の手首を痛い程握ってベッドに倒れ込む、ギシッと音がなりシーツに皺が刻まれる。クスクスと笑う◎は私の首に自分の腕を回して抱き締めると「あったかい」と呟く、逃げられないな 我ながら情けのない考えで彼女の顎と頬を手のひら全体で掴み口付けを落とした。







「ぁっ、零治さ・・・んっ」

「◎」


ベッドに2人して倒れ込むまでは主導権だって私が握ってたのに、零治さんは私の顎とと頬を骨ばった手でぎゅっと掴みながらキスを繰り返す、甘ったるい口の中が彼のせいで苦くなっていく、息苦しさを覚え私は彼の胸板を押したがビクともせず口内を犯されながら半分ほど脱いだワンピースをぺろりと捲り上げられた。


「零治さん、シャワー浴びてないから・・・舐めないでよ・・・」

「もう遅い」


オジサン特有の嫌な匂い一つしない彼の首元に顔を埋めて深く息を吸った、ほんのり香る私の香水の香りと人間の匂い。ブラジャーを上に捲りあげて零治さんは私の乳房の形を確かめるようにすっぽりと掌で包み込む、ひんやり冷たい指先のせいでギュッと縮み込む乳首を容赦なく摘んで零治さんは舌を私の口内から抜き取った。

ゆっくりと私の瞳から唇へと視線を動かしたあと、人差し指で私の皮膚をなぞり乳輪の端を撫でると唇を近付けた。シャワーを浴びてないから正直舐められるのは勘弁して欲しかったが身体はそんな事はどうでもいいらしい、零治さんの舌先がちょんとぶつかった途端雷に打たれてしまったかのように痙攣した。

私の弱い女を虐め続けるように舌先で転がしたり舌の腹でべろりと舐めあげた後零治さんは片手を下へと伸ばした、パンツの隙間を指先で撫でたあと太ももを撫で手を繰り返す零治さん。


「お前はいつもあんな砂糖ばかり摂取しているせいでいたる所が甘いな」

「零治さんもそんな冗談言うんだ」


私の馬鹿にしたような声に彼はピクリと片眉を上げてそして下着の端をグイッと中央に引っ張り私の大事な部分を露わにする、彼から見えていないにせよ恥ずかしくて邪魔をすれば胸に歯形がついてしまうほど噛まれた。痛くて涙目になる私に目もくれず零治さんは中に遠慮なしに指を突っ込む、細い指が入口を通り奥へと進んでいく海に沈むような感覚に息を飲んだあと私は大きく吐息を漏らした。

夜はすっかりと私と零治さんを虜にして快楽へと沈めていく、ぼうっと火照る体を捩りながら彼の髪をぐしゃっと掴んで窓の外で光る星に喘いだ。



20191108