遠い夏の日

もうヒーターがないと眠れないなんて事は言わないでいいみたい、日に日に少しずつ温かくなって言ってる。洗濯物を乾かすのも苦じゃないし、外に出る時に必ずつけてたマフラーも必要ないみたい。

もう春だな。



「◎」



幻聴かと思った。静かなこの部屋に、私以外がいるとしたら一大事だし。だけど 懐かしい懐かしい彼の声に私は 声の方に振り返る。



「バーン君」

「...久しぶりだな」



去年の夏沖縄で出会った 燃えるような赤い髪が特徴的な、私の...初恋の夏が蘇った。出会った時に着ていたユニフォームじゃなくて 今日は私服だった。まだ少し肌寒いのに上着をきてない。



「元気だったか」

「...うん、なんとかね」

「前は悪かったな、」


「本当は 人間だったんだよね」



エイリア学園の選手としての彼を見ていた、ずっと怒ってて可哀想な子だなって思ってたけど 私にだけは優しかった。自惚れかもしれないけど...、人間だって知った時は 嬉しかった。だから、急な別れなんて そこまで寂しくなかった。



「会いに来てくれたの、本当に嬉しい」

「...お前に言ってないことあったからよ」


「なに?告白...?」



冗談ぽくクスッと笑うと、バカ!そんなんじゃねーよ!と恥ずかしがる彼に可愛すぎるよねー本当に。とにやけてしまった。



「俺の 本当の名前お前に言いたかったんだよ」

「名前...そっか、名前」


「南雲晴矢だ ...よろしくな」



夏の日を思い出させるような、そんな名前に なんだかオレンジジュースが飲みたくなってしまった。晴矢君は、少し暗くなってきた空を見て「また、明日来るからな」と何故だか 偉そうな態度をとり(前からだけど) 赤い頬っぺを手でおさえながら出ていった。






20180302