ユダ

私が基山ヒロトと出会ったのは イナズマジャパンの合宿所だった。「俺が君を幸せにしたい」なんて言ってくれたっけ、恐ろしい程によく出来た男の子。人の痛みが分かるから、人にとても優しかった。私はそんな彼が本当に好きで 好きで堪らなかった。付き合ってからも 私は彼の立ち居振る舞いに文句一つ言ったことがなかった、だって完璧だったから。彼は本当に完璧で、流星を散りばめて作ったような綺麗な瞳を持ってて 彼はこの世に彼だけだって 圧倒的な魅力を持っていた。



「◎ちゃん」

「ヒロト君、寒いね 今日も」

「うん、寒いね これ着るかい?」



自分の着ていた黒のブルゾンを私の肩にかけて、 どうぞ と缶のココアをくれた。来る途中で買ってくれた所を想像したら 愛しさにパンチされる気分で とても嬉しかった。...こういう所、いつもいつも一緒だな。大好き。



「ヒロト君 今日泊まってもいい?」

「俺はそのつもりだったよ」



長くて白い指が私の左手に触れて、見つめあう。緑の深い目に吸い込まれるように キスをして バカップルみたいに笑い合い 私達はしっかりと手を握ってヒロト君の部屋に向かった。














いつも通りのキスをして、いつも通りに体を触った。すべすべの白い肌のヒロト君は 女の子みたいなのに しっかりとした筋肉が私を包んで 女にしていく。触れられる場所 全てがじんわりとあたたかくなって燃えていく。まるで火炙りされてるみたいに、激しく感じてる。

ヒロト君、私の大好きな ヒロト君。

首にちくっと痛みを感じて 「すぐ付いちゃうんだね」 なんて照れ臭そうに笑ってる、ずるい顔だなぁ。「普段こんなことしないのに 珍しいね」軽い女に見られないようにって そういう事はしないヒロト君だったけど、ヒロト君の物だって証をつけられたのは正直いって嬉しかった。



「もっと、もっとつけて...」

「いいのかい?」

「うん...嬉しい、ヒロトくんのモノだって 私の身体に教えてるみたいで」



細い首に腕を絡めた、ぐっと 力が入り肌と肌が密着した。あたたかさに 泣きそうになるくらい幸せを感じて ヒロト君の瞼にキスをした。「大好きだよ、◎ちゃん 一生君とこうやって 何も変わらずに愛し合ってたい」って、私が照れる方なのになんで ヒロト君が照れちゃうかな...。












優しい愛情をぶつけ合った後、二人して眠りに落ちた。夢の中...ヒロト君の後ろ姿が見えて 嬉しくなって呼んだら「ヒロトなら 吉良さんの家にいるよ」なんて意味の分からないことを言うものだから。私は「何冗談言ってるの?」って返した。「俺の名前は*****だよ」って 聞こえない...なんて言ったんだろう...?



「ヒロト君!冗談はやめてよ...」



私の事をからかってるんだ!って思って怒って言えば 本当に何を言ってるか分からないって顔をされた...ぐにゃりと輪郭が溶けて ソフトクリームみたいになって...。ひっ と小さい悲鳴をあげて 私は一目散に逃げた 後ろの方でくちゃくちゃとガムを噛む音が聞こえる。


涙を流しながら 目を覚ました。


そこは、ヒロト君の部屋で 横を向けば 裸に毛布をかけているヒロト君の綺麗な赤い髪が見えた。「ひろとくん...ねぇ、おきて...」縋るような声が出た。不気味で嫌な夢だったから 大丈夫だよ って撫でてキスしてほしい...。



「ん、どうしたの...?」

「ヒロト君...」


「...なんで泣いてるんだい?」



指で涙を拭われて、ぎゅうと抱き締めてもらった。夢で何があったか一生懸命話をした ぽんぽんと頭を撫でてくれて 落ち着いてきた。



「怖い夢だったね」

「本当に怖かった、ヒロト君は 産まれてからずっとヒロト君として生きてきてたのに 夢の中では初めて会う人みたいな...違う人になってて怖かった......」

「...僕は元々ヒロトじゃないから」

「ご、めん...そんなつもりじゃ...」


「元々誰かが貰うはずだった幸せを俺が奪ったから、当然の報いなのかも」



悲しそうな顔で笑って、私の頬を撫でるヒロト君。ねぇ、私にとってのヒロト君は 今まで頑張って生きてきてくれたヒロト君なんだよ。って 言いたかったけど。言えなかった。だって
夢の話だったから。

少しの沈黙のあと またキスをして、二人共深い眠りについた。





20180311